なぜ今ブランド・アクティビズムが重要か

アメリカの世界的な経営学者であり、「マーケティング4.0」の概念を生み出したフィリップ・コトラーは去年、”Advancing the Common Good”という著書を出版しました。そんな彼が近年語っているのは、今の時代における「ブランド・アクティビズム」の重要性です。ブランド・アクティビズムとは、「企業やブランドが自分たちの価値観やスタンスなどを主張すること」です。これまでの企業のあり方と具体的にどのような変わっていく必要があるのか、ブランド・アクティビズムが求められている背景と共に紐解きます。

提供する価値の追求だけでは選ばれない時代が来ている

今までの消費者は、企業やブランドが提供する価値の独自性を重視していました。例えば、Appleの製品の機能性・デザイン性やNetflixの利便性などが、独自性のある価値と言えます。そのため、これまでは企業にとって何よりも、バリュープロポジションが重要でした。バリュープロポジションとは、企業やブランドが持つ自社にしか提供できない顧客に対する価値を追求することです。商品の差別化なども、バリュープロポジションの一種になります。

しかしコトラーは、このように顧客に対する独自の価値を提供するだけで顧客に選んでもらえる時代は終わったと言います。しかし、企業やブランドに対して、商品の価値以上に求められているものとは、いったい何でしょうか。また、この時代の変化はいったいどこから来るのでしょうか。

それは、コトラーが去年出版した本のタイトルになっている”Common Good”です。

私たちはどの時代も”Common Good”を求めている

“Common Good”は、「万人に共通する善」と意訳されます。コトラーの意味するところは、人々はいつの時代も「より多くの人のため」の社会を目指している、ということです。その根拠として、国の統治の仕方があります。現在の大多数の国々で、資本主義や民主主義が選ばれていますが、その根本的な理由は、それらがより多くの人々にとって良いものであるためです。特に、資本主義は経済の循環を促し、全ての人口の生活を豊かにするものとされ、受け入れられてきました。

しかし、資本主義経済が成熟しつつある現代では、資本主義が上手くいかなくなっていると考える人も少なくありません。資本主義が進むにつれ、経済格差も拡大しています。そのため、より多くの人のために価値のある商品やサービスを提供するという資本主義に基づいた企業の存在意義は、評価されるのに十分でなくなっています。

ミレニアル世代と企業の社会的責任

現代の経済活動を支えるのは、1980~2000年あたりに生まれたミレニアル世代と呼ばれる人たちです。彼らは、資本主義の理想的な経済が成熟し、上手くいかなくなっている時代で育ってきた世代と言われます。彼らは、ただ企業活動に支持するのではなく、企業が商品価値の提供以上に「社会を良くするために何をしているか」を重視します。「世の中を良くする会社の商品を買いたい」、また「社会に貢献する企業で働きたい」と考える人が増えているのです。

さらに、2015年に国連によって、国際的な「持続可能な開発目標」(SDGs)がかかげられました。SDGsの設定によって、人々の中での社会問題への意識が以前より高まっています。同時に、企業活動が及ぼす社会や自然環境への影響もより懸念されるようになっています。そのため先進国の間では、自社の社会的責任をしっかりと果せている企業やブランドを選択することが、消費者の責任であると言えます。

これからの消費者に選ばれるためには

社会的責任を果たしながら、社会を良くする企業であることを積極的にアピールすることが、これからの消費者に選ばれるための大前提になります。積極的にCSR活動を展開することが求められますが、その前に、世の中を良くするために、自分の企業やブランドが掲げる具体的な価値観・スタンスを明確にすることが重要です。これがコトラーが提唱する「ブランドアクティビズム」です。

“企業やブランドが、企業活動以外に「社会良くするため」に、何を、なぜ、何のために、どのようなことをしているかを透明性を持って伝える”

ブランドアクティビズムの6つの要素

では、社会を良くするための価値観・スタンスとは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。現在では、以下の6つの要素があります。それぞれ、SDGsで取り上げられている問題に通じています。

1.社会問題

人権問題、平等(LGBTQ、ジェンダー、教育機会等)

☞社会問題に関する企業PRについてはこちら 「物質主義の先にある、これからの消費動機」

2.法律問題

働き方、労働環境、税制など

3.ビジネス問題

役員報酬やビジネス倫理などの企業のガバナンスに関わる問題

4.経済問題

税金や最低賃金、経済格差などの問題

5.政治問題

政府の政策や選挙に対するスタンス

6.環境問題

自然保護や環境破壊などの問題

☞企業のサステイナビリティへの取り組みについての記事はこちら 「サステイナビリティとビジネス」

この6つの要素全てに取り組む必要はなく、自社と少しでも関わりのある領域にフォーカスし、その問題に対してどのような貢献ができるかを考えることが大切です。

現在の日本社会では、社会問題や政治問題の領域は、企業単位では取り組みにくいとされています。しかし、男女平等などの社会問題と働き方改革などの法律問題は近年確実に注目されている要素です。環境問題は、国際的に重要度が高く、日本企業が取り組みやすい課題です。

ある程度要素を絞ることができたら、「なぜ、何のために、どのように」より良い社会のために行動していくのかを明確にします。それを積極的に世の中に発信していき、ミレニアル世代に信頼され、選ばれる企業・ブランドに成長することこそが、ブランドアクティビズムの意義です。

参考:MarkeZine「主張と意義のないブランドは淘汰される」コトラーが語る、ブランド・アクティビズムの重要性(https://markezine.jp/article/detail/32287

参照:

コトラー著書”Advancing The Common Good” 関連サイト “ACTIVISTBRANDS.COM

経団連「日本企業の環境問題への取り組み サイトリンク集