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「想起される」ブランドであるべし -エボークドセットとは-

「想起される」ブランドであるべし -エボークドセットとは-

投稿日:2021年10月22日/更新日:2021年10月22日

「選ばれるブランド」になるためにマーケターは常に様々な施策を取って購買に繋げようと日々努力しています。プライシングブランディングなど様々な施策がある中で、今回は顧客にブランドを「想起してもらう」点に着目したエボークドセットという概念を紹介します。本記事ではエボークドセットとは何なのか、どのようにしたら顧客のエボークドセットに選ばれるのか、などについて考えていきたいと思います。

 

エボークドセットとは

エボークドセットとは英語でevoked setと書くように「想起集合」を意味し、何か製品を想像した際に思い出される複数のブランドのことを指します。例えば、「スマートフォン」と言われてAppleのiPhoneやGoogleのAndroidを想像した人はそれらをエボークドセットと呼びます。また、スマートフォンに限らず、日用品やレストランなどにもそれぞれのエボークドセットが一人一人に存在し、消費者は無意識的に購入する商品の幅を狭め、フィルタリングしています。

つまり、消費者に製品やサービスを購入してもらうためには品質を向上させるなどの努力も重要ですが、思い出される必要があります。また、エボークドセットの中でも最初に思い出されるブランドを第一想起と呼び、第一想起となることで実際に購入してもらえる確率が非常に高くなると言われています。

 

AIDMAとの関係性

以前AIDA / AIDMAは時代遅れか?の記事でも触れたように、消費者は何かを購入する際一定のプロセスを辿ると言われており、想起集合の概念はAIDMAに類似した部分があると言えます。というのも、人は想起集合に製品やサービスを分類する以前に、以下のようなフィルターにかけて幅を絞っていっていると言われています。

入手可能集合 → 知名集合 → 処理集合 → 想起集合

知名集合=認知(Attention)、処理集合=興味(Interest)、想起集合=記憶(Memory)のように置き換えることができ、「想起」の概念はAIDMAにおける記憶(Memory)に類似していることが分かります。購入するかどうか検討しているプロセスの中で、記憶に定着しているかどうかは購買行動(Action)に直接繋がる要素であるため、ここを掴んでおくことが非常に重要でしょう

 

エボークドセットに選ばれるには

エボークドセットに選ばれるためには一定のカテゴリーの中で際立った存在でなければなりません。ここでは三つの方法に触れていきたいと思います。

ニッチな領域を狙う

まだ競合の少ない領域で商品やサービスを展開することで「この領域と言えばX社だ」と思ってもらうことが容易になります。また、サブカテゴリーを強化することも一つの手段です。例えば、既に競争の激しい洗剤業界であったとしても、一定の汚れを落とすことに特化した製品を販売することで「○○汚れ用洗剤と言えばX社だ」と考えてもらうことができます。

ターゲットを絞る

ニッチな領域を狙うのと似ていますが、こちらでは顧客主体で考えてみます。一定の人はどのような機能を欲しているか、どのようなサービスを求めているかなど、一般層ではない顧客のニーズを考え、その人たちにアプローチした製品やサービスを展開することで一定の層のエボークドセットとして選ばれることができるでしょう。ただ、その顧客層があまりにも薄すぎると採算の取れない状況になり得るため注意が必要です。

記憶に残る宣伝を行う

思い出してもらうことに注目したとき、最初に考えられるのはこの方法かもしれません。しかし、ただインパクトのある宣伝では意味がなく、製品とブランドが紐づけられるような仕組みを作るべきです。テレビCMであれば頭に残るCMソングなどが効果的と言えます。「シャンプーと言ったら」など実際にそれが何の製品なのか織り込むことで製品からブランドを連想してもらいやすくなります。

 

まとめ

AIDMAなどのフレームワークでも表されているように、人は無意識の内にも一定のプロセスを経て製品やサービスを購入しています。今回はその中でもエボークドセット(想起集合)に着目し、その実態とどのようにしてエボークドセットに選ばれるかについても考察を行いました。ただ、エボークドセットとして選ばれることは重要ではありますが、あくまで重要要素の一つであるため、そればかりに気を取られていてはなりません。例えば、文中でも触れたように、ニッチなカテゴリーを狙うあまり採算が取れなくなるなどそのようなことになると本末転倒と言えます。「想起されること」を程よく意識してマーケティング活動を行ういましょう。

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