激化する競争、動画配信サービスの広告付きプランに効果はあるか

コロナ禍に入り好調と言われていたNetflixなどをはじめとした定額制動画配信（SVOD）サービス市場ですが、2022年に入り一部では激しい競争の中登録者数や売上が安定しない状況が続いています。これを受けてか、Netflixは従来の定額制プランに加え、広告が動画内に挿入される価格を抑えたプランも始めると発表しました。NetflixだけでなくDisney+も広告付きプランを今年（2022年）中に開始するとしています。本記事ではNetflixとDisney+の事例を取り上げ、それらの効果について考えていきたいと思います。

関連記事：Netflixが広告事業に参入？その真意は

プラン詳細

Netflix

まず、それぞれのサービスにおけるプラン詳細です。Netflixは2022年11月より日本を含む世界各国で広告付きプラン「Basic with Ads」を開始すると発表しました。「Netflixが広告事業に参入？その真意は」にもあるようにNetflixは2022年4月に「1～2年後に広告付きのプランを開始する」とアナウンスしていました。そのため、予想よりも前倒しにプランが開始されたことが分かります。

現時点でNetflixには月々990～1980円の三つのプランが用意されていますが、新しいプランは広告が動画内に配信される代わりに790円という低めの価格設定がなされています。広告は1時間に4、5分程度流れ、人によっては気にならない長さになっていると言えます。ただ、このプランでは広告が流れるだけでなく、一部視聴できないコンテンツもあるということが分かります。また、各プランでは動画のダウンロードが可能な一方で、このプランではその機能が制限されているようです。そのため、「広告が配信されるだけで790円か」と考えていると、その他の機能制限に期待を裏切られるかもしれません。

Disney+

Disney+も2022年12月より広告付きプラン「Disney + Basic」を開始するとしています。米ドルでは一般のプランは現在10.99ドルで、広告付きプランは7.99ドルで配信するとしています。日本円では現在月額990円という価格設定になっており、それよりも安い価格になる予定ですが、近年の円安を鑑みるとどのような価格設定になるのかあまり想像できない状況となっています。

関連記事：韓ドラで注目されるプロダクトプレイスメントが効果的な理由

狙い

2022年前半には会員数が減少していたNetflixですが、9月末には有料会員数が回復し増加傾向にあるようです。また、Disney+も好調のようです。そのように両者調子は良いようですが、2022年には広告付きプランを開始するだけでなく一般のプランも値上げしています。そのような中なぜ広告付きプランを開始するのでしょうか。また、なぜNetflixは前倒しで広告付きプランを開始したのでしょう。

まず、競争の激化が挙げられます。これはHuluやAmazon Primeなど同じSVOD内だけでなく、YouTubeやTiktok、CTVなど動画関係のエンターテインメント市場全般を含みます。特に、コロナ禍に入り、家で楽しむようなエンターテインメントコンテンツは現在競争が激しく、Netflixなどは新たな差別化戦略及び成長戦略として幅広い顧客層を取り入れようとしていると言えます。特に、「もう少し安ければ入会するのに」と考えている層を狙っていると言えます。

Netflixに関してはいずれターゲティング広告を配信するとしており、それに伴い性別や生年月日などの顧客情報の入力を「Basic with Ads」加入者に課すとしています。つまり、広告付きプランに加入する人が増加するとNetflix側としても得られる情報が多くなるということです。そうすることで動画をおすすめする際にもよりパーソナライズ化したものを提示することができるようになるでしょう。

また、単純に広告枠販売から得られる収益は非常に大きいと言えます。現在一般のプランに加入している人が広告付きプランに変更したとしても月額の支払額は減りますが、広告枠販売から得られる収益が大きいためむしろプラスになるとも考えられています。特に、SVODサービスの広告枠は非常に魅力的で価値があるため比較的高めの値段で売買されるでしょう。

まとめ

今回紹介したように、複数のSVODサービスが広告付きプランを開始しようとしています。これは競争の激化や市場環境の変化によるものだと言えます。特に、Netflixはサブスクリプション型のビジネスだけでやっていくと当初は発表しており、現在のように広告で収入を得ることに対し前向きであることはその競争の激しさを表しているのかもしれません。2022年中にそれぞれのプランが開始し、今後どのような展開になるのか動向から目が離せません。

参考：

Impress Watch “Disney+、米国で広告付き定額制プランを導入”

The Owner “激化する動画配信市場のシェア争い、Netflixが過去10年間で初の会員減少”

Yahoo! ニュース “ネトフリが月額790円低価格プラン　広告付き、11月4日から“