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コンビニは完全に無人化される?ファミマの飲料補充AIロボットを例に

コンビニは完全に無人化される?ファミマの飲料補充AIロボットを例に

投稿日:2023年2月11日/更新日:2023年2月11日

コンビニは完全に無人化されるのか?ファミマの飲料補充AIロボットなどにみられる無人化施策

近年、ファミリーマートやローソン、セブンイレブンなどの大手コンビニを始めとして小売業界の省人化・無人化が進められています。

現在は、品出しや清掃、決済まで全てが無人化されたコンビニはみられません。しかし、多くのコンビニではセルフレジが導入されるなどして着実に省人化が進んでいます。また、レジ以外の部分でも、AIカメラなどによる「決済の無人化」や、AIロボットによる「品出しの省人化」が行われている店舗はいくつかあります。

本ブログでは、決済の無人化や店舗の無人化の例を紹介し、今後数年間でどのように店舗のあり方が変化していくかについて考察します。

現在行われているコンビニの無人化・省人化施策

ここでは、コンビニ業界で近年取り組まれている無人化・省人化の取り組みについていくつか紹介します。

ファミマの無人決済化

2021年3月に、無人決済システムが導入された最初の店舗「ファミマ!!サピアタワー/S(サテライト)店」が登場しました。その後、北関東や中国地方にもファミマの無人決済店舗は導入され、24年度末までに約1000店出す方針を掲げています。

この無人決済店舗には株式会社TOUCH TO GOのシステムが使われており、顧客が手に取った商品をAIカメラによりリアルタイムで認識し、出口で決済内容を確認し、支払いをすることで買い物が完了するというシステムです。

参照:ファミリーマートの無人決済店舗への挑戦!(前編) – ファミマトペ

TOUCH TO GOは、顧客には”忙しい中、非対面でスムーズに買い物を済ませることができる”というメリットを、店舗には”省人化によってスタッフの人件費・教育費を低減する”というメリットをもたらします。

参照:日本で唯一実用化されている省人化無人決済店舗システム – 株式会社TOUCH TO GO

ファミマの無人飲料補充AIロボット

ファミマでは、先ほど紹介した無人決済店舗とは別に、バックヤードで飲料補充をスタッフの代わりに行うロボット『TX SCARA』の導入も行われています。2021年11月に、「ファミリーマート経済産業省店」に導入されました。

TX SCARAには『Gordon』というAIが組み込まれ、過去の売り上げデータから時間帯や季節などに合わせて適切なタイミングで商品を陳列することができます。また陳列に失敗した場合には、遠隔でスタッフが操作をすることも可能です。

2022年8月には、ファミマはこの飲料補充AIロボットを今後300店舗へ導入する予定だとしています。

参照:Telexistence社新型ロボット『TX SCARA』をファミリーマート経済産業省店に導入 ~バックヤードにおける飲料陳列業務を独自AIシステムで自動化~ – Family Mart

参照:飲料補充AIロボットを300店舗へ導入 ~店舗の更なる省人化・省力化を推進~ – Family Mart

ローソンの自動・無人決済システム

ウォークスルー決済導入店舗「Lawson Go MS GARDEN店」が、2022年10月にオープンしました。「Lawson Go」の技術では、AIカメラと商品棚の重量センサーを併用することで、お客が出口やレジで決済内容を確認することなく自動的に会計が行われ、事前に登録した決済方法で店舗を出た際に自動的に決済が行われるというシステムです。

LAWSONでは、このような無人店舗を拡大するにあたり、今後はオンライン決済のみでなくセルフレジの設置も考えているようです。

参照:ウォークスルー決済導入店舗 「Lawson Go」10月11日(火)から、新たに展開開始 – LAWSON

セブンの省人型店舗

セブンイレブンでは2019年3月から「省人化プロジェクト」が実施されており、セミセルフレジなどの導入により、従業員の省力化・省人化を図っています。

セミセルフレジとは、スタッフが商品スキャンや袋詰めをしている間に、客が自動会計機により支払いを済ませるというものです。その全てを客自身が行うフルセルフレジと比較し、会計にかかる時間を短縮できることから客にかかる負担を最小限に、スタッフの省人化にも繋がっています。

参照:省人化への取り組み – セブンイレブンジャパン

コンビニは完全に無人化されるのか?今後の見通し

先ほど紹介した大手コンビニのうち現時点で完全に無人化されている店舗はみられません。どれも、決済の無人化・省人化、品出しの省人化はされていますが、店舗に全くスタッフが必要ないという店舗はまだ日本では登場していません。

無人化・省人化のためのシステム導入は長期的に見ると、人件費・教育費よりも安くすむと考えられるため、多くの小売業界で挑戦されています。またスムーズな購買体験を提供することで顧客満足度を上げることもできると考えられます。しかし、完全無人化は現時点では現実的ではないでしょう。

コンビニの完全無人化が現実的ではない理由

現実的ではないと考えられる理由は3つあります。

1つ目は、店舗内にスタッフがいないことで、酒・タバコなど取り扱えない商材があるということです。このような規制面の問題は、オフィス街にある無人型店舗では影響がないですが、一般店舗では売り上げの低下に繋がることもあります。

2つ目は、顧客の中には人による接客を好む方が少なからずいるということです。コンビニの強みとして、近くて便利で手軽に商品を求められるということが挙げられます。しかしそのためには、少なくともスタッフ一人は店内に留まり、質問や緊急時への対応をすることが必要です。

3つ目は、無人型店舗はすぐに人々の生活に浸透するのは難しいということです。そもそも、無人型店舗の利用方法がわからないという方もいます。いくつかの無人型店舗では万引き防止などのために顔認証機能が設置されていますが、個人情報保護の観点で導入が容易ではないという問題があります。また、決済アプリの事前登録が必要な店舗がありますが、登録の手間を避けるため他店舗に顧客が流れるかもしれないという問題も考えられます。

その他、無人型店舗は比較的小さなスペースとなるため、配置できる商品も一般店舗と比較すると少ないです。それにあたって、品揃えや配送の効率を工夫する必要があります。

コンビニは無人化ではなく省人化される

以上のような問題が考えられるため、コンビニは完全無人化ではなく省人化されていくでしょう。

しかし、海外ではAmazon Goなどのように完全に無人化された小売店舗が実在します。最先端の技術をもってすれば、顧客に便利な購買体験を提供することは今後可能でしょう。しかし、日本のセブンイレブンが「店舗に関わるすべての人が『いいお店だな』と思える店舗にしていきたい。」という理念を掲げている例のように、コンビニそれぞれのコンセプトを叶えるためには無人化ではなく省人化がゴールになっていくと考えられます。

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