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MMMと他手法を徹底比較|効果測定の正しい選び方(前編)
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MMMと他手法を徹底比較|効果測定の正しい選び方(前編)
MMMと他手法を徹底比較|効果測定の正しい選び方(前編)

なぜ今、マーケティングの効果測定がこれほど注目されるのでしょうか。
日々新しい商品やサービスが生まれ、消費者の興味関心も多様化している現代において、マーケティングは企業の成長に欠かせない要素です。企業は、テレビCMやWeb広告、SNSなど、さまざまなチャネルを通じて積極的にマーケティング活動を行っています。しかし、その活動に投じたコストが、どれほど売上につながっているのかを正確に把握することは簡単ではありません。さらに近年では、プライバシー保護の観点からCookie規制が強化され、従来のデジタル広告の効果測定はますます難しくなっています。Cookieに依存しない、より本質的な効果測定手法が求められているのです。
こうした中で注目されているのが MMM(Marketing Mix Modeling) です。MMMはCookieに頼らず、あらゆるマーケティング要素の効果を統合的に分析できる手法として、多くの企業で導入が進んでいます。
ただし、MMMは数あるマーケティング効果測定手法の一つにすぎません。他にもMTA(マルチタッチアトリビューション)やA/Bテストなどがあり、それぞれ目的や使いどころが異なります。ではまず、MMMと他の効果測定手法との関係性を整理してみましょう。

MMMと効果測定の関係性
MMMやMTA、A/Bテストといった手法はすべて「マーケティング効果測定」の枠組みに含まれます。ただし、目的や得意とする領域には違いがあります。
MTAやA/Bテスト:広告やWebサイトのパフォーマンスを詳細に分析し、今後の施策を改善するための実績評価に重点を置く。
MMM:実績評価に加えて、統計モデルを用いて未来の売上を予測し、マーケティング予算の最適な配分を決定する将来予測と予算最適化に主眼を置く。
このように、MMMと他の効果測定手法は目的が異なるため、互いに補完し合う関係にあります。
本記事では、このMMMと、MTA(マルチタッチアトリビューション)、A/Bテスト(インクリメンタリティテスト)、階層的重回帰分析といった主要な効果測定手法を比較し、それぞれのメリット・デメリットを明らかにします。最後に、自社に最適な手法の選び方についても解説します。
マーケティングの全体像を捉える「MMM」
MMMとは、過去の売上データに加え、広告費や販促費といったマーケティング活動、さらに市場動向や競合状況などの外部要因を統計的に分析し、それぞれの要因が売上にどれだけ貢献しているかを明らかにする手法です。

引用:マーケティングミックスモデリングガイドブック(9ページ)
MMMの特徴・メリット
- マクロ視点での効果測定
個別ユーザーの行動ではなく、施策全体が売上に与える影響を分析します。これにより、どのチャネルにどれだけ予算を配分すべきかなど、中長期的な戦略立案に役立ちます。 - Cookie規制の影響を受けにくい
Cookieに依存せず、集計データ(施策ごとの費用や売上)を使うため、プライバシー保護の流れの中でも安定して運用可能です。 - オフライン施策も測定可能
テレビCMや雑誌広告などオフライン施策の効果まで測定できる点が、MMMの最大の強みです。多くの効果測定手法がデジタル広告に偏る中、MMMはマーケティング活動全体を俯瞰し、包括的な分析を可能にします。
MMMの注意点
データの収集やモデルの構築に時間と専門知識が必要となるため、導入には一定のコストがかかる場合があります。また、あくまでマクロな視点での分析手法なので、「この広告クリエイティブとあの広告クリエイティブではどちらが効果的か」といった、ミクロな最適化には不向きです。この点は、これからご紹介する他の手法と併用することで補完していくことが重要です。
他の代表的な効果測定手法
ここでは、MMMとは異なる視点や目的を持つ代表的な効果測定手法を解説します。
マルチタッチアトリビューション分析 (MTA)
MTA(Multi-Touch Attribution)は、ユーザーが商品購入やコンバージョンに至るまでに接触した複数のデジタル上のタッチポイントを分析し、それぞれの貢献度を可視化する手法です。
例えば、あるユーザーが最初にSNSで広告を見て、次に検索エンジンで商品名を調べ、最後にディスプレイ広告をクリックして購入に至った場合、MTAはこの一連の行動を追跡し、SNS・検索エンジン・ディスプレイ広告の3つに異なる貢献度を割り当てて評価します。
MTAの特徴・メリット
- ユーザー行動の可視化
コンバージョンに至るまでの経路を詳細に把握できます。 - 施策ごとの貢献度評価
個々の広告施策がどの程度効果を持っていたのかを明確に測定できます。 - ミクロな最適化
結果を基に、効果的な広告媒体やクリエイティブへ予算を集中させるなど、日々の運用改善に活用できます。
MTAの注意点
MTAはデジタル広告の細かな最適化には有効な手法ですが、現代のマーケティング環境における課題に直面しています。その最大の要因は、ユーザーの行動追跡に依存している点です。近年のCookie規制やITP(Intelligent Tracking Prevention)などのプライバシー保護強化の流れにより、ユーザー行動データの正確な取得が難しくなってきています。これにより、MTAで得られるデータは不完全になりがちで、分析結果の信頼性が低下するリスクがあります。
また、MTAはユーザーのウェブ上での行動を追跡する仕組みのため、テレビCMや交通広告といったオフライン施策の効果は測定できません。デジタルとオフラインを統合したマーケティング戦略を立てる際には、MTAだけでは不十分なケースが多いのです。
A/Bテスト(インクリメンタリティテスト)
A/Bテストは、特定の施策や要素の効果を客観的に評価するための実験的手法です。Webサイトのデザインや広告のキャッチコピーなど、一つの要素について2つの異なるパターン(AとB)を用意し、ランダムに振り分けられたユーザーに表示して比較します。
特に、広告の効果測定においては「インクリメンタリティテスト」とも呼ばれます。これは、広告に接触したグループと接触しなかったグループを比較することで、広告が実際に売上やコンバージョンを「純増」させた効果(増分効果)を測定するものです。
A/Bテストの特徴・メリット
- 因果関係を明確に特定
A/Bテストの最大の強みは、結果と原因の因果関係を明確に証明できることです。「この施策を実施したからこの結果が得られた」という確実なデータを得られます。 - ミクロな改善に強い
広告クリエイティブやランディングページのわずかな変更が、コンバージョン率にどう影響するかを素早く検証できます。 - 導入しやすい
比較的シンプルで、専門的なツールや高度な知識がなくても実施しやすいという利点があります。
A/Bテストの注意点
A/Bテストは、あくまで特定の要素の効果を測るためのものなので、テレビCMやSNS、Web広告など、複数のマーケティングチャネル全体が売上にどう貢献しているかといった、MMMのようなマクロな視点での評価はできません。
また、厳密な結果を得るためには、十分なサンプル数や期間を確保し、他の要因を排除したテスト設計が求められますので、慎重な設計が必要です。
階層的重回帰分析
階層的重回帰分析は、複数の要因が目的変数(この場合は売上など)に与える影響を、階層的な構造で分析する高度な統計手法です。MMMを支える統計手法のひとつですが、単独でもマーケ効果測定に使われます。
この手法では、まず売上に直接影響を与える要因(広告費用、販促費など)を分析し、次に、それらの要因に間接的に影響を与える要素(景気動向、季節性、競合の動きなど)を段階的にモデルに組み込んでいきます。このように多層的な分析を行うことで、各要因の売上への貢献度をより精緻に、かつ多角的に評価することが可能になります。
階層的重回帰分析の特徴・メリット
- 複雑な要因分析
複数のマーケティング施策や外部要因が複雑に絡み合う状況において、それぞれの影響度を詳細に明らかにすることができます。 - 精度の高いモデル構築
複数の変数を段階的に考慮することで、より現実の市場に近い精度の高い予測モデルを構築できます。
階層的重回帰分析の注意点
この手法は、統計学やデータ分析に関する専門的な知識とスキルが不可欠です。モデルの構築や結果の解釈を誤ると、間違った結論を導き出してしまうリスクがあります。
また、複雑なモデルになるほど、データの収集や分析に多くの時間と手間がかかります。この手法は、MMMをさらに深掘りする際に非常に強力なツールとなりますが、導入のハードルは高いと言えるでしょう。
次回はこれらの手法を比較し、自社に最適な手法の選び方を解説します。
参考
https://www.hakuhodo.co.jp/aaas/assets/doc/news/mmmguidebook/mmmguidebook.pdf
https://www.adjust.com/ja/blog/what-is-multi-touch-attribution/
https://www.adjust.com/ja/blog/what-is-incrementality/
https://xica.net/xicaron/list-of-statistical-models-in-marketing/
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