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最近注目されるメタバースは単なるマーケティングなのか
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最近注目されるメタバースは単なるマーケティングなのか
最近注目されるメタバースは単なるマーケティングなのか
Googleで「Metaverse(メタバース)」と検索すると、約5100万件の検索結果が表れます。その中にはアメリカ政府が後押ししたメタバース開発への投資が数百万ドルに及ぶという見出しも出てきます。しかし、Googleに表示される定義によれば「メタバース」はまだ「架空の世界」とされています。
Googleのアルゴリズムによるこの定義、「架空の世界」というのは、ある意味正しい表現です。メタバースは最近様々なメディアを通して耳にするようになりましたが、そのもの自体はまだこの世に存在していません。現時点で発表されているものは、ゲームなどで使用される初期段階の仮想空間に過ぎないのです。一方で、GoogleやFacebookなどのプラットフォーム企業は本当の意味でのメタバースを実現する日は近いと主張し、そのために多大な投資を行っています。そのようなメタバースでは、人々がデジタル世界の中でアバターをなって現実世界とほぼ同じような感覚で買い物や仕事、人との交流を行うことができます。
しかしながら、メタバースはプラットフォーム企業の力だけで実現できるものではありません。パンデミックの影響で多くの人の生活の大半がオンラインに移行しましたが、人々の経験のすべてをデジタルの中に移行することは全く別の挑戦になります。メタバースの開発はインフラ不足、寡占、そして明確なルールやガイドラインの欠如によって、停滞しています。
このように機能的な実態がいまだないメタバースが話題になっているのはなぜなのでしょうか。
話題性を狙ったただのマーケティングなのでしょうか。
以前から存在していたメタバースという考え
メタバースの根本である、デジタル仮想空間という未来は1990年代前半から小説家や技術者によって予想されており、バーチャルな世界はいつか物理的な現実と同じように重要になるだろうと考えられていました。
過去10年の間で、仮想現実という考えはあまり注目されていませんでしたが、オンラインゲーム・SNSの発達や人気の高まりによってデジタル世界の中での生活という考えが少しずつ人々に認知されています。さらに、VRヘッドセットなどのバーチャルリアリティのテクノロジーの発達や「レディ・プレイヤー1」などの仮想世界を舞台とした映画が人々がメタバースがどんなものなのかを想像するヒントになりました。
2018年に「レディ・プレイヤー1」の映画が公開された当時は、メタバースはまだまだ遠い未来の世界に感じられました。しかし、2020年に始まったパンデミックが学校や仕事、人との交流やコミュニケーション、エクササイズなどの人々の生活の全側面におけるデジタル化を一気に加速させました。そしてある調査によれば、現在の人々のデジタル消費量は1人の生涯においてスクリーンを見ている時間がなんと44年分に相当するものだといいます。
そう考えると、まだ現実的には想像がつかないメタバースも近い将来可能になるかもしれないと思えてきます。
メタバースは単なるマーケティングなのか
メタバースへの期待が社会の中で少しずつ高まりを見せている裏で、テクノロジー企業は何年もの間その実現に向けて競争を繰り広げています。プラットフォーム企業は、自社独自のメタバースを開発するために有効なハードウェアを持つ企業を買収したりと静かに動いています。
例えば、Facebookは初めに2014年にVRゲームを運営する企業であったOculusを買収し、その4年後に脳からの電子信号をコンピューターに送ることができるリストバンドを開発したCTRL-Labsという企業を買収しました。そして自社のコンプライアンス問題の最中であった去年、Facebookグループの親会社の名前をMeta(メタ)に社名変更すると発表しました。この決定は、多くの批評家からコンプライアンス問題等でネガティブなイメージのついてしまった社名を一新するためにとったただのマーケティング戦略であると非難されました。
メタバースの専門家であるMatther Ball氏によると、Metaの社名変更は単なるマーケティングではなく、将来を見据えた「シグナル」であるといいます。既に存在する商品を顧客にアピールするマーケティングとは異なり、メタバースという新しいコンセプトを世の中に認知してもらい、トレンドとして発信し、投資を呼ぶこむためのシグナルだったとBall氏は考えています。
また、実際に社名変更が、社会にメタバースを認識させ投資を促すことを目的としていたならば、それは成功したと言えます。Metaに社名を変えると発表して間もなく、Microsoftはこれから人々はより多くの時間をデジタル世界で過ごすことになるという考えから700億ドルでソーシャルゲームの運営会社であるActivision Blizzardの買収を公表しました。また、Appleも独自の消費者向けのVRヘッドセットを開発していると報道されています。つまり、世界的なテクノロジー企業がこぞってメタバース開発を推し進めているのです。
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メタバース実現への課題と好機
もし、Metaが構想するようなメタバースが2026年までに実現しなかったとしても、没入型のデジタル世界の普及は避けられない未来であると考えられています。なぜなら、より現実的なコンピューターグラフィックやより高度な人工知能などの技術が進歩すれば、没入型デジタル世界におけるユーザー体験をより豊かにすると期待されているからです。
メタバースという考えは一般的にはまだ仮説上のものと捉えられていますが、専門家はその今こそ、社会がメタバースとそれに付随する様々な側面について議論するべきであると言います。例えば、メタバースに関する法律や規則、データプライバシー保護、フェイクニュース、人体やメンタルヘルスへの影響など、様々な問題が挙げられます。
メタバース専門家の1人のBall氏は、このようなデジタルにおける変革期は同時に改善や改革の機会を開くと考えており、プラットフォームの変遷が起こたびに、主要な企業の面々が変わる傾向があるといいます。その変革期においては、私たち消費者や有権者、ユーザーもその変化にインパクトを与える力を持っているのです。
参考:“The New York Times “Is the Metaverse Just Marketing?” / Lauren Jackson
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