バーチャル広告はこれからの新しい広告の形となるのか?
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ポストcookie時代におけるターゲティング広告
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ポストcookie時代におけるターゲティング広告
ポストcookie時代におけるターゲティング広告
IoTやデータドリブンマーケティングが浸透し、情報のもつ付加価値が日増しに大きくなりつつある昨今、Webメディアの世界は大きな転換期を迎えています。今回は、ユーザーデータを活用した行動ターゲティング広告の仕組みと効果について触れ、そのシステムに変革を迫るポストcookie時代とは何か説明していきます。
1. 行動ターゲティング広告とはなにか?
行動ターゲティング広告とは、オーディエンス(広告の受け手)であるWebユーザーの行動履歴を分析し、その嗜好や関心にマッチした広告を提示しようとする手法です。具体的には、検索履歴・閲覧履歴などのアクセスデータを利用して、ユーザーがいつどこのサイトで何に関心を抱いていたのかを加味し、広告を選定します。
例えば、最新の冷蔵庫についてサイト上で調べると、そこから一定期間は東芝やSHARPなど冷蔵庫に関するWeb広告ばかりが表示される、といった現象は、行動ターゲティング広告によるものです。インターネットを利用する中で、誰もが一度は経験しているのではないでしょうか。
こうした行動ターゲティング広告の最たる有用性は、コンバージョンに繋がる可能性が高い点にあります。そもそも広告内容がユーザーの関心に沿うよう作られているので、CTR(Click Through Ratio:広告の表示数に対するクリック率)や、CVR(Conversion Rate:サイト訪問者数に対して商取引が成立する割合、顧客転換率)がより高く、結果的にCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)を抑えることができるのです。
過去に総務省が実施したサービス事業者へのヒアリングによれば、行動ターゲティング広告のCTRは、ノンターゲティング広告と比べ平均で3倍以上も高かったと報告されています。このように広告主にとってメリットの多い行動ターゲティング広告は、2005年ごろから瞬く間に広告業界を席巻しました。
2. 行動ターゲティング広告のネガティブな側面
しかし、こうした広告の在り方に誰もが納得していた訳ではありません。中には、自身のプライベートな情報を商業目的で乱用される感覚を嫌うユーザーも存在しました。あらゆる個人情報を分析にかけ、全てを把握しようとする過剰なまでの顧客志向は、マーケティングの本質的な目的を阻害する可能性があります。
行動ターゲティング広告のネガティブな側面としては、以下の3つが挙げられます。
①オンライン・プライバシーの軽視による顧客離れ
閲覧履歴をもとに広告を打つので、「監視されている」、「
②セキュリティ上のリスク
例えば2019年には、Facebookユーザー2.7億人の個
③同じような広告を繰り返すマイナス効果
ある程度内容がランダムなテレビCMとは異なり、
3. ポストCookie時代
ここまで、行動ターゲティング広告はメリットが大きい反面、
欧州では2018年にGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が施行され、個人情報の処理に関し厳しい規則が設けられました。また、訴訟大国アメリカのカリフォルニア州においては、2020年からCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行され、規則に違反した場合は民事での制裁金が課されるなど、コンサルティング業界も対応に追われています。
さらに、2020年1月14日にはあのGoogleが、「個人情報保護を優先し、今後2年間でcookieの利用を段階的に廃止する」と明言したため、広告業界はいよいよ行動ターゲティング広告の手法を見直す必要に迫られています。
cookieとは、Webサイトがユーザーを識別するため、ユーザーのブラウザに保管されるテキストファイルです。解りにくいですが、個々の学生を識別する学籍番号のようなものがアクセスと同時にPCへ付与される、とイメージしてください。cookieがあるおかげで、Webサイト側は私達のPCを認識・区別することができます。
このcookieにはファーストパーティークッキー(First Party Cookie)と、サードパーティークッキー(Third Party Cookie)の2種類があります。
ファーストパーティークッキーは、ユーザーがアクセスしたWebサイトから発行されるcookieで、ネット上のログイン機能やカート機能を利用するうえで欠かせないものです。それに対して、サードパーティークッキーは、訪問Webサイト以外の第三者サーバーによって発行されるcookieで、主に広告配信業者などがユーザーを識別するために付与するものです。
Googleが2年後に廃止するのはサードパーティクッキーです。そして、このようにサードパーティクッキーの利用が制限される近未来が、ポストcookie時代です。ちなみにAppleのsafariでは以前からサードパーティクッキーのブロックが進んでおり、Firefoxでも同様の動きが見られます。このサードパーティクッキーが利用できないとなると、広告配信業者はページから離れたユーザーを識別できず、トラッキングできません。つまり行動履歴を追って把握することができないので、cookieによる行動ターゲティング広告が打てないのです。
もちろん、2年後に突如としてターゲティング広告が一切使えなくなる訳ではありません。Googleに直接広告を依頼すれば、ファーストパーティークッキーによるターゲティング広告が可能です。また、Googleの声明によれば、現在サードパーティクッキーを利用する広告業者に対しても配慮のうえ、cookieに代わるツールを開発中であるとのことです。
こうしたGoogleの緩やかな試みはプライバシーサンドボックスと名付けられ、ユーザーの安全を担保した新たな標準を設けるとともに、データの精度を向上させようとするものです。
ただ、これまでのように大量のデータを自由に入手することは容易でなくなるので、DSP広告を取り扱う企業などは特に対策を急いでいます。
4.コンテキスト広告
そんなポストcookie時代において、期待されているのがコンテンツ連動型広告であるコンテキスト広告です。ユーザーの行動履歴を分析するのではなく、ユーザーが現在進行形で利用しているコンテンツに連動させ、広告を自動的に表示するものです。その瞬間ページに表示されている文章や画像の内容を解析して広告を選定するので、ユーザーの個人情報に依存しない新たなターゲティング広告として注目されています。
AIを駆使したアドテクノロジーを提供する米カリフォルニア発のGumGum(ガムガム)は、このコンテキスト広告を得意としている企業のうちの1つです。GumGumは、AIによる画像認識技術を用いてページ上の文脈(コンテキスト)を読み取り、そのデータを潜在意味解析にかけて広告を最適化しています。
GumGumのように、今後は閲覧されているWebページ上のコンテンツを利用し、その文脈に合わせて広告を選定する手法が優位になるのかもしれません。
5.まとめ
以上、ターゲティング広告に関してポストcookie時代の前後を概説していきました。
即時的には、サードパーティクッキーを代替しうるツールの開発など、補完的にユーザーの情報を入手し、行動ターゲティング広告を成立させる術を模索する必要があるでしょう。
ただ長期的に考えると、ユーザーの行動履歴に依存した広告手法は緩やかな規制を免れないので、コンテンツの文脈を読み取るコンテキスト広告が期待されています。また、パーソナライズされた広告を好むユーザーに対し、より質の高いIDデータの使用許可を呼び掛ける施策なども重要です。
2010年、総務省によってネットユーザー1066人への意識調査が行われました。「広告に活用されてもよい」と思う情報は何か尋ねたところ、「居住地域」の情報活用に50.1%のユーザーが同意し、次いで「性別」が48.7%、「年齢」が43.5%という結果になりました。一方で、「ウェブサイトの閲覧履歴」の情報活用に同意を示したのはわずか8.8%です。
このことから解るように、メディアに携わるマーケターは、ユーザーが不快にならない線引きを見極めつつ、個々の関心に沿うよう広告を配信していくセンスが求められます。
【参照】
・総務省 情報通信政策研究所 (2010)「行動ターゲティング広告の経済効果と利用者保護に関する調査研究報告書 」
・Exchange Wire Japan(2018.04.06.)長野雅俊「テレビCMに比肩するブランド広告プラットフォームを構築-GumGumが目指す日本のデジタル広告市場の変革」
・Google (2019.08.22.) Building a more private web.
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