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新宿東口「ビックロ」が閉店、その理由は?
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新宿東口「ビックロ」が閉店、その理由は?
新宿東口「ビックロ」が閉店、その理由は?
新宿東口にある「ビックロ」が2021年6月19日に閉店することを発表しました。家電量販店であるビックカメラとファストファッションブランドであるユニクロがコラボした店舗であり、閉店と言ってもユニクロが店舗から撤退するという形を取るそうです。本記事ではビックロにおける戦略の考察に加え、閉店に至った理由についても考えていきたいと思います。
ビックロとは
前述のように、ビックロとはビックカメラとユニクロの共同店舗であり、2012年新宿東口に誕生しました。家電とアパレル両方を扱っており、開店当初より異色のコラボだと注目を集めていました。フロアによって扱う品物が異なり(1階は共同運営)、ユニクロの他にもファーストリテイリングの子会社であるGUも建物内に店舗を設けています。
ビックロはビックカメラが借り上げた建物の一部にユニクロがテナントとして入居しているという形を取っています。今回ユニクロは10年間の入居契約が切れるため、その際契約更新を行わずにそのまま撤退するとしており、「ビックロ閉店」と言ってもユニクロだけが出ていきビックカメラはそこに残るようです。
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戦略
元々ビックカメラがユニクロの集客力を借りることが目的としたコラボとも揶揄されていましたが、実際の戦略はどうなのでしょうか?実際に、共同店舗の運営を行うことでお互いにコラボ効果は生じるでしょう。集客力に限らず、コスト削減効果や経営基盤の強化が望めます。
まず、集客に関しては、ユニクロとビックカメラ共にお互いの顧客から恩恵を受けられるでしょう。家電を買いに来た顧客がついでに服を買って帰るなど「ついで買い」が起こることが予想されます。ついで買い促進の例として、ビックカメラの暖房器具の隣にユニクロのヒートテックが展示されるなどのコラボも行われているようです。また、ユニクロとビックカメラでは顧客層が異なるため、お互いにとって普段あまりリーチできない顧客を実店舗に誘導することが可能になります。特に、ビックカメラにとって若い女性客を取り込むことは非常に魅力的だったと言えます。
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上で触れたように、このようなコラボ店舗では広告費用の削減に代表されるようにコスト削減効果が見込めます。テナント費用が削減できる上、一般的な店舗では呼び込めないような顧客を呼び込めるためコストメリットが多いでしょう。また、従業員や顧客データを含めお互いの経営資源を利用しより効果的な経営が可能になっていると言えます。
閉店理由
効果的な経営が行われていたビックロですが、なぜユニクロはここから撤退するのでしょうか。新型コロナウイルス流行後ユニクロはよりEC販売に力を入れるようになったのと同時に、数多くの店舗を半ば躊躇なく閉店しており、ビックロもその店舗の内の一つだと言えます。ただ、新型コロナウイルスの影響の他にも、新宿における人流の変化も理由として挙げられます。特に、入居契約を行ったのは10年前であり、変化は当時と比較すると顕著でしょう。
例えば、当時新宿東口で大きな集客力を誇っていた伊勢丹ですが、近年では百貨店業界全体として不況が続いており、伊勢丹の集客力の恩恵を受けていたビックロを含む周辺店舗は痛手を負っています。また、最近では西口の再開発が進んでおり、東口へ訪れる人も減っているようです。
今後 / まとめ
ビックロからユニクロ撤退後、現在の店舗はビックカメラ新宿東口店として残り、また同じファーストリテイリングの子会社であるGUもそのまま営業を続けるようです。ただ、ユニクロは東口から撤退後、新しく新宿に2店舗(新宿フラッグス店、新宿三丁目店)オープンするようで、新宿という街自体はまだユニクロにとって魅力的なようです。
ビックロではユニクロとビックカメラ両方の集客力を利用したり、商品間の関連性を強調したりして相乗効果を生んでいました。その点非常に理にかなったコラボ店舗のようでしたが、環境の変化を加味した結果ユニクロは撤退を選択したようです。特に、ユニクロは最近ではEC販売、店舗DX及びオムニチャネル化に力を入れているため、リソースの効果的な分配を考えたときこの大規模な実店舗からは撤退する方が良いと選択したのかもしれません。新宿に新たに誕生するユニクロの店舗についても引き続き目が離せません。
参考
Adver Times “ビックロ、10年の歴史に幕 ユニクロが退店して解消へ”
Yahoo! ニュース “ビックロ閉店が意味する「新宿駅東口の凋落」…ユニクロ撤退の理由はインバウンド激減だけじゃなかった“
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