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誇大広告

誇大広告

投稿日:2022年7月20日/更新日:2022年9月14日

爺の雑言14 – 誇大広告 

参議院選挙の結果が出た。投票日2日前に安倍元首相暗殺事件があり自由民主党が改選単独過半数を確保した。岸田首相は安倍元首相の意思を継いでいきたいとして憲法改正に取り掛かると宣言した。岸田首相の検討はするが、実行しない点を世間では「検討使」や「検討おじさん」とも揶揄するが、「黄金の3年」と言われる権力基盤を得た今、自由民主党の参議院選挙公約である「決断と実行-日本を守る。未来を創る。」を本当に実行できるのだろうか。野党公約は政権を取った場合の仮定公約であり多少誇大広告であっても構わないが、単独過半数を得た政権与党の公約は誇大広告であってはならない。 

自由民主党の公約「日本を守る」では、①「毅然とした外交・安全保障で、“日本”を守る。」として外交力、抑止力および対処力の強化をあげている。②の「強力で機動的な原油高・物価高対策」では、原油価格・物価高騰等総合緊急対策によりガソリン価格の値上を押さえ、人への投資促進で格的な賃金増時代を創るとしている。③の「徹底した災害対策で、“国民の生命・財産・暮らし”を守る」では災害被災地の一日も早い復旧・復興に努めるとともに、将来起こり得る自然災害の最小化に全力で取り組むとしている。④は「感染症対策と社会・経済活動の両立で、“国民の命と暮らし”を守る」として「科学的知見に基づく万全の感染症対策を講じるとともに、社会・経済活動を一層進めていくことによって、国民の「命か、暮らしか」ではなく、「命も、暮らしも」守り抜きます。」としている。一方の「未来を創る」を見ると、①は「“新しい資本主義”で、“強い経済”と“豊かさを実感できる社会”を創る」として「成長」と「分配」を掲げ、人、技術、スタートアップへの投資を拡大し、国民の所得を増やし、賃金の上昇、消費増から投資の拡大への好循環を生み出し、気候変動、少子高齢化などの社会課題への取り組みと寄り添い、安心して暮らせる社会の実現をあげている。②は「”デジタル田園都市国家構想“と”農林水産業・地域経済の振興“で“活力ある地方を創る」とし、デジタル技術の進歩により、都市と地方がWin-Winの関係で結びつくことで「日本全体の活力」を創り出す、そのような理想を胸に、あらゆる施策を総動員しますとしている。③が「憲法を改正し、新しい“国のかたち”を創る」で「政治は国民のもの。」として、みんなで憲法について議論し、必要な改正を行うことによって、国民自身の手で新しい“国のかたち”を創る。それこそが「国民主権」のあるべき姿としている。(以上自由民主党HPより抜粋) 

これらの公約自体が実現目標値もなく、なにか取り掛かれば公約は果たせたと言い切れるように文字あそびしているものに見えるのは爺だけだろうか。例えば、“新しい資本主義”で、“強い経済”と“豊かさを実感できる社会”を創るって何なの?成功したとは言い難いがアベノミックスが3本の矢を示したのに比べて具体的に示されてもいない。 

スシローの「おとり広告」 

「おとり広告」は、特に不動産のネット広告で多く見られる。実際は成約している格安物件を広告に出し、それを目当てに顧客が来店したら別の物件を勧めるといった不動産業界では慣例的に行われてる手法だ。この「おとり広告」で、回転寿司チェーン1位のスシローが消費者庁から景品表示法違反の措置命令を受けた。「おとり広告」の悪質な事例としてテレビ、新聞などで大々的に報道された。 

消費者庁は2022年6月9日、大手回転寿司チェーンのスシローが昨年に実際とは異なる表示で不当に客を誘う「おとり広告」を行っていたとして、運営会社に再発防止などを命じる措置命令を出した。違反案件は①2021年9月8日~20日に発売した「濃厚うに包み(税込110円)」が期間中に4日間も販売停止していた件、②9月8日~10月3日に販売した富山の鮨し人とコラボした「新物うにの3種盛り(税込528円)」は期間中に3日間の販売停止と594店中540店(90.9%)で1日以上の販売をしていなかった件、③11月26日~12月12日に販売した「豪華かにづくし(税込858円)」は初日から販売していなかった店舗を含め605店中583店(96.3%)で1日以上販売しなかった件の3件が違反だった。(株式会社FOOD & LIFE COMPANIES リリースより) 

スシローはこれらの3件について「売切御免」と表記し、売り切れた時点で販売停止をすることは明示していた。一方、消費者庁と公正取引委員会は、期間中に多くの店舗で販売停止が起きた点を問題視し、「供給量が著しく限定されていたにもかかわらず大々的にキャンペーンを告知し集客したこと」「品切れになってもそれを告知せず集客し続けていたこと」の2点を悪質と認定したようだ。加えて、スシローは2022年2月にも「天然本マグロ中トロ」と表記した商品にインドマグロを実際には使っていた点、中国産のうなぎを「九州産うなぎ」と銘打って偽装販売するなどの「虚偽表示」で謝罪してこともあって、スシローのプロモーションについて、消費者庁が注視していた。 

景品表示法 

消費者の選択を誤らせるような不当な表示や、過大な景品類の提供を制限、禁止することで、消費者の利益を保護することを目的とした法律が「景品表示法」である。爺が若いころ販売促進キャンペーンの企画時には、投下金額と販売予測金額の比較や景品プレミアム金額の上限等で法務部のチェックを必ず受けていたし、景品表示法の関連する部分は勉強し、熟知していた。同時に広告会社も法務部での審査を受けるダブルチェック体制で臨んでいた。だからテレビ広告を行うようなキャンペーンでスシローが行った行為はマーケティングに携わる人間からすると不思議でならない。このケースは社内法務部や広告会社法務部を通さなかったか、虚偽の企画案を法務部に提出していたのかのどちらかであろう。ただ、続いて出た「フライング広告(キャンペーン前に店内POPを掲載)」を見ていると、この会社の体質あるいは会社ぐるみの犯罪なのだろうと思わざるをえない。 

「誇大広告」とは、事実を大きく異なる形で自社の商品やサービスを優良、有利であるとアピールすることで、消費者に誤認を与えてしまう広告のことを言い、「景品表示法」は誇大広告などの違法な広告表示を不当表示と定義し、規制している。 

「景品表示法」は1976年に制定されて以来、行政措置制度をもとに食品広告や営業広告など、多様な分野で嘘や大げさな表示から消費者を守り、購買判断を誤らせる不当な景品の問題に対処してきた。2016年には、不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度が導入されるなど、景品表示による法的規制はますます強まっている。 

景品表示法に定める表示の対象は、ありとあらゆる全ての商品やサービスで、顧客を誘引する手段と定義され、規制対象はCMやインターネット広告といった、明白な商業広告だけではなく、口頭でのセールストークなどの無形の広告についても対象となる場合があり、その範囲は広く、①商品や容器、包装による広告、その他の表示のほか、これらに添付したものによる広告見本やチラシ、パンフレット、説明書面のほか、ダイレクトメールやファクシミリなど、その他これらに類似する物による広告その他表示と、口頭による広告(電話営業を含む)プラカードや建物、電車に掲示する看板のほか、ポスターやアドバルーン、その他これらに類似する物による広告や陳列物、実演による広告新聞紙や雑誌その他出版物、拡張機による放送を含む放送、映写、演劇、電光による広告インターネットやパソコン通信など、情報処理の用に供する広告その他表示が景品表示法の規制対象とされている。 

ついでに記すが、景品表示法では、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」、「その他誤認される恐れのある表示」の3つを第五条(不当な表示の禁止)で、定義してる。「優良誤認表示」は、商品・サービスの品質や規格などの内容が、実際よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示で「ブランド牛」「有機野菜」の表示が実際と違った場合や強力なダイエット効果があるように表示しているが、合理的根拠が示されない場合が該当する。「有利誤認表示」は、実際はそうでもないのに、自社の商品やサービスの品質や規格などが競争業者よりも、「お得ですよ」と思わせて、著しく有利であると誤認させる表示である。合理的な根拠がないのに、「どこよりも安い」と表示した場合や「今月だけの半額特価実施中」と表示して本当は期間限定価格ではなかった事例が該当する。 

「その他誤認される恐れのある表示」には、紛らわしい表示として下記の表示が禁止されている。 

・無果汁の清涼飲料水などについての不当な表示 

・商品の原産国に関する不当な表示 

・消費者信用の融資費用に関する不当な表示 

・おとり広告に関する不当な表示 

・不動産のおとり広告に関する不当な表示 

・有料老人ホームに関する不当な表示 

くれぐれも広告主企業は、広告活動を行う上で景品表示法に触れるようなことをしないことだ。スシローの件は、逆パブリシティー効果により大きな経営損失を生むことになるだろう。 

NHK受信料値下げは「おとり」 

2022年6月3日参議院本会議で「改正放送法」が可決・成立した。改正放送法の主な内容は次の通りだ。①NHK受信料の値下げの原資とする「積立金制度」を導入する②テレビを持ちながら、正当な理由なく、期限までに受信契約の申し込みを行わない世帯に対し、NHKが新たに割増金を徴収できる制度を導入する③子会社の業務の効率化を図るために、NHKが中間持株会社を新たに保有できるようにする。④民間の放送事業者の外資比率が20%以上になると、違反状態になるが、直ちに認定取り消しとせず、是正させる猶予措置を設けるなどである。まるでNHKの受信料値下げを「おとり」にして、受信料を支払わないと割増金を徴収するなど、受信料制度をさらに強化した内容にも見える。 

中でも重要なのは①の2023年度に受信料を下げるための「積立金制度」である。NHKの収入が支出を上回った場合、その一定額(年間受信料収入の1割に当たる700億円程度)を原資としてプールする仕組みと③の関連会社について関連事業持株会社を認めたことにある。今までもあったNHK幹部職員の天下り先が容認され、NHKが値下げに対してバーターで持ち出したものが認められたことになった。また、④の民放の外資比率規制が20%未満となり、「外資は悪」と位置づけ、報道の自由や斬新な経営手法といった外資活用のプラス発想はないようだ。ちなみに、NTTなどは3分の1まで外資比率が認められているのだが、放送と通信は違うのだろうか。 

総務省では、令和4年7月12日(火)から同年8月10日(水)までの間、同件について意見募集を行っている。この意見募集に対して、政党要件を満たし政党助成金をもらえるようになったNHK党はどうやって公約を実現するのかが見ものである。何もしないなら、彼らの公約も誇大広告だ。 

DPF取引透明化法に巨大IT広告規制 

政府は7月5日の閣議で、巨大IT企業に取引条件の開示などを義務付ける「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(以下、DPF取引透明化法)」の規制対象にデジタル広告分野を追加する政令改正を決定し、8月1日から施行の予定だ。 

「DPF取引透明化法」は、DPFとその運営企業に対し、取引環境の情報開示や透明化に向けた取り組みやその報告などを課す法律で2021年3月に施行後、一定以上の市場規模を持つECモールやアプリストアの運営事業者を「特定DPF提供者」と指定し、規制の対象としてきたが、規制対象にデジタル広告分野のDPFを追加する政令改正を閣議決定した。広告主に対する取引条件の情報開示などをデジタル広告のプラットフォーマーに義務付け、DPF規制の観点からデジタル広告市場の透明化を促していくことになる。今秋には対象企業を指定し、規制の効力が発生する。Googleやメタ(旧フェイスブック)などが含まれる見通しである。 

今回の政令改正により、対象となるDPFには、自社の検索サービスなどに広告主の広告を掲載する「メディア一体型広告DPF(国内売上高1000億円以上)」と、広告主と掲載先となる第三者のウェブサイトを仲介する「広告仲介型DPF(国内売上500億円以上)」の二つが新たな区分に加わる。9月1日までに指定の区分および市場規模に該当するDPF提供者からの届出を受け付け、今秋には規制の対象となる「特定DPF提供者」の指定を行うことになっている。デジタル広告市場の透明化が実現できれば幸いだが、GoogleやMetaはしたたかだ。法はできたが、機能せずにならないことを祈るばかりだ。 

ターゲティング広告”規制など 改正電気通信事業法が成立 

インターネットの閲覧履歴をもとに広告を表示する、いわゆる「ターゲティング広告」に関する規制などを盛り込んだ改正電気通信事業法が6月13日の参議院本会議で可決・成立した。改正電気通信事業法には、ウェブサイトやSNSなどのアプリを運営する事業者が、利用者の閲覧履歴を外部の広告会社などに提供する場合、あらかじめ利用者に「通知」したり、サイトやアプリ内で「公表」したりするよう義務づけることなどが盛り込まれた。 

インターネット広告の主流を占めてきた「ターゲティング広告」は、さまざまな方法でユーザーのニーズをつかみ、それに合わせた広告を配信する仕組みの総称である。「オーディエンスターゲティング」「デバイスターゲティング」「ジオターゲティング」「コンテンツターゲティング」「リターゲティング」がターゲティング広告で利用される代表的な手法とされる。 

当初の検討段階では、外部に閲覧履歴を提供する場合、あらかじめ利用者の「同意」を得ることを義務づけるかどかが議論となっていたが、「ビジネスの自由度が奪われる」などの経済界からの反発で、利用者への「通知」やサイト上での「公表」などを義務づけるものにとどまり、利用者を守るための実効性のある規制には課題が残ったともいえる。 

自分が興味をもった商品・サービスに関係のある広告が、まるで追いかけてくるように次々と表示される。この現状に不快感を抱きその情報管理に不安を感じるユーザーも多い。インターネット広告をユーザーのニーズに合わせて配信するためには、そのユーザーが閲覧した時のデータを利用する。このデータを一部の巨大企業が握って、営利目的で乱用されるというリスクは不安だけでなく重大な問題でもある。利用者の関心に合った精度の高い広告ができる反面、利用者への「プライバシーの侵害だ」との声もあり、欧米では規制が進んでいる。 

インターネット広告に対する規制は、主要各国が足並みをそろえて実施に踏み切るその背景にはインターネットの広がりと、加速するITの進化、さらに国家規模の収益を得る巨大IT企業の存在がある。日本政府は、ほかの主要国に同調する形で、「ターゲティング広告」に狙いを定め、個人情報が悪用されるリスクからネットユーザーを保護するとともに、巨大IT企業の影響力を、徐々に低下させる思惑もあると考えられる。 

ターゲティング広告は、インターネットブラウザのCookie(クッキー)という機能を利用し、ユーザーが今何を検索していて、何に興味をもっているのかをデータから読み取り、そこから推測したユーザーのニーズに合わせて広告を配信する。ターゲティング広告は、購入見込みのあるユーザーを特定できるため、広告宣伝コストを抑えながら、テレビをはじめとしたほかの広告媒体よりも高い効果を期待でき、費用対効果が高いというメリットもある。 

Cookieから取得できる情報は、基本的にサイトの運営者により設定されるため、場合によってはユーザーが望まない情報まで利用されるリスクがある。加えて利用者が意識しないのに別な広告のサイトにも紐づけられている場合もある。その際、別なサイトとの間にも、いわゆる「サードパーティーCookie」が作成される。つまり、ユーザーは自分の意思とは無関係に、第三者にも情報提供をしてしまっていることになるのだ。顧客データの誇大利用といってもよい。サードパーティーCookieは特に欧米で問題視され、巨大IT企業を取り締まるうえで、規制を強める動きが加速している。日本もその流れに従って、ターゲティング広告に対する規制が適用されることになった。だが、ターゲティング広告そのものが禁止されるわけではない。具体的には、ユーザーがサイトを閲覧する時に、各サイトはCookieの使用許可をユーザーに求めることになるだけである(この仕組みはすでに導入されている)。 

現在「コンテキスト広告」という新しい広告配信システム(ユーザーが閲覧しているページの文脈や画像を解析し、そのユーザーの興味を喚起する広告を配信する形を変えたターゲティング広告)も出てきている。いずれにしても広告業界は、規制に抵触しない方法でターゲティング広告の継続を図るものとおもわれる。インターネットがさらに進化を続ける上では、個人のプライバシー保護が強化され、より安全な仕組みをベースに、ユーザーが本当に望むような広告の配信方法が構築されることが望まれる。 

岸田首相は7月14日、安倍元首相の国葬と電力不足対策として原発を動かすことを発表した。黄金の3年を得て自信を持ったのか、「検討使・検討おじさん」の突然の変身に驚くばかりだ。安倍元首相の在任中の功罪や暗殺の背景にある統一教会と国会議員の関係問題を国会で議論することなしに国葬を決めてしまうのは早計のように思える。事件があるとエモーショナルになり、過去を美化する国民性を利用した決断に思えるのだ。安倍元首相の働きは認めるが、結果として国力地位の低下を止められなかったことを忘れてはいけない。 

また原発再稼働については、最高裁が福島の原発事故に国の責任はないとの判決をし、一方で東京地裁では東京電力元経営陣4人に13兆円賠償命令の判決が出た。国は責任を取らないが、電力会社の責任で原発を動かせと岸田首相は言っているに等しいのだ。せめて私の責任で電力会社に原発を動かしてほしいと言うべきだったと思うのだ。 

 

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