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MMMを成功させるデータ基盤とは?構築の3つの鍵
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MMMを成功させるデータ基盤とは?構築の3つの鍵
MMMを成功させるデータ基盤とは?構築の3つの鍵

マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)は、広告や販促など複数の施策が売上にどのように寄与しているかを可視化し、最適な予算配分を導き出すための強力な手法です。
近年では、Cookie規制やプライバシー保護の流れを背景に、MTA(マルチタッチアトリビューション)など従来の手法が難しくなる中で、改めてMMMが注目を集めています。
しかし、実際にMMMを導入した企業の中には「思ったより結果が使えない」「分析の精度が低くて意思決定に役立たない」と感じるケースも少なくありません。その多くは、モデルそのものの問題ではなく、データ基盤の不足や不整備に起因しています。
MMMは、統計モデルやアルゴリズムだけで成果が決まるわけではなく、むしろ「どんなデータを、どの粒度で、どのように揃えるか」が成功のカギを握ります。言い換えると、データ基盤の整備こそがMMMを本当にビジネスに活かせるかどうかを左右するのです。
本記事では、MMMを効果的に活用するために不可欠なデータ基盤の重要性を解説し、質の高いデータ基盤を構築するための3つのポイントをご紹介します。
MMMに必要なデータとは
MMM(Marketing Mix Modeling)は、売上に影響を与えるさまざまな要因を統計的に分析し、チャネルごとの貢献度を明らかにする手法です。言い換えると、「売上(成果)を説明するために、どの要素をどのようにモデルに入れるか」 がすべてを左右します。そのため、MMMでは大きく分けて次の3種類のデータが必要になります。

売上や成果指標のデータ
MMMの基盤となるのは「何を説明したいのか」という目的変数です。
- 売上高や取引件数:最も代表的な指標で、通常は日別または週別で集計。
- ブランド指標(認知・好意度など):売上に直結しないケースでも、中長期効果を測る目的で利用。
- リード獲得やコンバージョン数:BtoBやEC領域では売上の代替指標としてよく用いられる。
マーケティング施策のデータ
売上に影響を与えうるマーケティング活動を網羅的に記録することが必要です。
- オフライン広告:テレビCMのGRP、ラジオや新聞・雑誌の出稿量など。
- デジタル広告:媒体別のインプレッション数、クリック数、費用、視聴完了率など。
- 販売促進施策:店頭キャンペーン、値引き、チラシ配布数、サンプル配布数など。
- チャネル別投資額:広告費や販促費など、金額ベースで管理しておくと分析の精度が上がる。
外部要因データ
売上は広告だけでなく、外部要因の影響も強く受けます。これを考慮しないと、広告効果を誤って推定してしまいます。
- 季節要因やイベント:年末商戦、GW、クリスマス、セール期、スポーツイベントなど。
- 天候データ:気温や降水量。特に飲料、アパレル、小売など季節性が強い商材では不可欠。
- 価格や競合情報:自社商品の価格変動や競合の値下げ・キャンペーン。
- 経済環境:景気動向、消費者マインド指数など。
MMMを成功させるために欠かせないデータ基盤の3つのポイント
MMMの分析モデルは、入力されるデータという燃料がなければ動きません。質の高い分析結果を得るためには、その燃料であるデータをどれだけ適切に準備できるかが最も重要です。ここでは、データ基盤を構築する上で特に押さえるべき3つのポイントを解説します。
網羅性
MMMの精度を左右する最大の要因が網羅性です。MMMは売上に影響を与えうるすべての要因を統合的に分析するため、広告出稿や販促データに加えて、気温や競合の動向、祝日や経済状況といった外部要因まで、できる限り漏れなく収集する必要があります。
データが欠けていると、モデルはその影響を他の要因に誤って割り当て、結論をゆがめるリスクがあります。たとえば、実際は気温上昇で飲料の売上が伸びていたのに、その情報がなければテレビCMの効果として誤判定されてしまうケースです。網羅的にデータを集めることは、分析精度を担保するための出発点だと言えるでしょう。
粒度と頻度
次に大切なのが解像度、つまりデータの粒度と頻度です。MMMは中長期の傾向を捉えるのに適していますが、事業特性に合わせてデータをどの粒度で扱うかを見極めなければなりません。
例えば、短期キャンペーンの効果を把握したい場合には日次データが望ましいこともあります。しかし粒度を細かくしすぎると、天気や配送遅延など偶発的な要因によるノイズが増え、モデルが不安定になりがちです。逆に週次や月次など粗すぎる粒度だと、個々の施策の効果を捉えきれません。つまり自社の事業特性に合った解像度を設計することが、実務での成功を左右するのです。
品質
最後に欠かせないのが品質管理です。実務の現場では、広告出稿量に欠損値があったり、異なる部門で同じ指標の定義が異なっていたり、入力ミスによる外れ値が紛れ込んでいたりと、データ品質の課題は少なくありません。こうした不整合をそのままモデルに投入すれば、出力結果の信頼性は大きく損なわれます。
そのため、データクレンジングや定義の統一、異常値の補正といった前処理は不可欠です。また、単発の対応ではなく、継続的に品質をモニタリングできる仕組みを整えておくことも重要です。精度の高いMMMは、分析手法そのものではなく正しいデータを正しく扱う基盤があってこそ成立すると言えるでしょう。
まとめ
MMMを効果的に活用するためには、優れた分析モデルだけでなく、質の高いデータ基盤の構築が不可欠です。本記事で紹介した3つのポイントを意識することで、分析結果の精度と信頼性を大きく高められます。
データの網羅性:売上に影響しうる要因を幅広く収集する
データの粒度と頻度:事業特性に合った解像度でデータを準備する
データ品質の確保:欠損や外れ値を補正し、継続的に整備する
これらを押さえることで、モデルが正確に売上への影響を捉え、実務での意思決定に活かせる分析結果を得られます。逆にこれらが不十分だと、どんなに高度な分析手法を使っても誤った判断につながるリスクがあります。
データ基盤をしっかり整えることは、MMMの成果を最大化する出発点です。マーケティング施策の改善や予算配分の最適化を目指す企業にとって、まずは「正しいデータを、正しい形で、継続的に」準備することが何よりも重要だと言えるでしょう。
最後に
弊社では、MMMの設計からデータ基盤の構築、運用まで一貫してサポートしています。
「MMMを導入したいがデータの整理から不安がある」
「既にMMMを使っているが精度に課題を感じている」
といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考
https://www.hakuhodo.co.jp/aaas/assets/doc/news/mmmguidebook/mmmguidebook.pdf
https://telecy.tv/column/what-is-mmm/
https://dalab.jp/mag/methods/marketing-mix-modeling/
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