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広告効果への取組
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広告効果への取組
爺の雑言8 – 広告効果への取組
日本アドバタイザーズ協会(以下JAA)は、会員社の重点広告課題調査結果(2020年11月10日~25日調査)を月刊JAAの1月号で発表している。インターネット調査で、会員社276社のうち111社(40.2%)が回答。その中のいくつかを記すと、
- 活用しているメディアではインターネットのリスティングが4%、動画・ビデオ90.1%、自社サイト86.5%でテレビ地上波の85.6%を上回っている。
- 広告出稿費(制作費も含む)割合(全体平均)は、テレビが2%でインターネットの28.9%を上回っていた。(JAA会員社に大手広告主が多いこと及びネット動画の制作費もテレビ制作費の一部として計上していることからなのかはわからない)
- 広告宣伝部門の業務はメディアプラン・バイイングと広告効果測定が共に91%と高い割合を示していた。
- 広告宣伝部門の業務の広告制作割合(自社に広告制作担当がいる)は55%であった。
- JAAが取り組む課題のトップは広告効果の測定・検証で1%だった。
興味が湧いたのは、③の広告宣伝部門の91%が取り組んでいるとしている広告効果測定と⑤のJAAが取り組む課題のトップに上がった広告効果の測定・検証である。ここに上がっている広告効果測定とは果たしていかなる測定を指しているのだろうかということだ。JAAの回答における広告効果測定にはいろいろな広告効果を測る意味合いが混在していると思われる。広告主各社に広告効果についての「どんな効果が解明されたらいいのか」を聞いたならば、数種の答えが出てくるはずでる。この種の調査質問としては、あまりにも獏としすぎている。売上貢献(例:売上量、シェア、購入頻度)、ブランド貢献(例:認知、信頼性、浸透度)、広告表現(例:再生度、説得度)、媒体選択(例:メディアミックス、媒体ジャンル別)などに分けて聞かれていたら、回答者の階層によっても違った答えが出てきただろうし、JAAが取り組む課題もクリアーになったのではないだろうか。
ネット広告効果情報開示
4月27日政府の「デジタル市場競争会議」が、第3者の広告効果の測定の受け入れや広告に使う個人情報の使い方の開示などをふくむ最終報告書をまとめた。ネット市場では広告取引の仕組みや価格設定基準、表示回数などの不透明さが問題視されていた。しかも第3者機関による表示場所や回数のチェックがテレビのビデオリサーチ社調査に比べて公ではない。ネット広告費がテレビへの出稿を抜いた状況で、この不透明性は広告効果や効率を語る上では広告主があまりにも無防備に広告費をかけすぎている感が拭えなかった。
規制強化のもう一つの柱は個人情報の扱いにある。履歴によるターゲッティング広告は、広告主が求める年代、好み、アフィニティグループに広告表示ができるため、購入に繋がる可能性が高いと考えられ、ネット広告の強みとされてきた。一方で、多くのネット利用者が嫌悪感や自身の情報利用に不安を持っている。広告の信頼性や安心感は、広告効果にも影響を与える。今回の政府のデジタル市場競争会議報告書で法案化が進み、せめてテレビ広告並みの透明化、安心感がネット広告にも進むことを期待したい。
広告費とは何か
「広告費とは何なのだろうか」。有価証券報告書上では、広告費は損益計算書の「一般管理費及び販売費」にあたり、給与や接待費と同じ性格の経費として扱われている。一方、広告費は将来の利益を上げるための先行投資とする考えもある。何故なら企業の設備投資や研究開発費と同じように、将来の成長を基に判断され設定されてもいるからだ。広告費が、必要経費であれ、投資であれ、広告にどれだけ使うかは戦略的決定事項になる。広告予算の設定には「実績連動方式」、「競合対抗方式」、「広告目標連動方式」、「支出可能方式」などの方法があるが、これといった決定的で誰をも納得させうる手法もないのが実情である。多くの広告主は自社の経験や知見をもとにこれらの組み合わせをしながら算出していると思われる。
広告予算はブランドあるいは会社のマーケティングおよび販売目標の機能でもある。その機能の中で定められた目標に対して広告費が効果的であったか、効率的であったかを証明していく義務が広告部門には生じてくる。広告が結果を示し効果があっても効率が悪ければ、それは効果的とは言えないし、広告費を効率的に運用しても目標に対して結果を示せなければ無駄な広告となる。効果を示し効率的な広告だけが効果的だったと言えるのだ。
「広告によって何が達成されたか」を示せ
広告効果を語る時、目的に対して「広告によって何がどの程度達成されたか」という効果を語る必要がある。各企業はマーケットにおいてマーケティング投資を行っているわけだが、その投資がはたして思い通りの効果をはたしているのかを検証することを避けて通ることは許されない。広告は企業活動及びマーケティング活動の一部である。マーケティングはブランドや製品を経験させるための活動であり、その可能性のある消費者に効果的にコミュニケートすることである。言うまでもなく、企業経営目標を達成するためにブランドのマーケティング目標があり、マーケティング目標を達成するためにマーケティングミックスが組まれる。広告はマーケティングミックスのひとつプロモーションに属し、PR活動、セールスプロモーション、人的販売などと共にプロモーションミックスとして計画される。広告目標が単独で決定され、実行されることはないのは周知の通りである。であるならば、メディアミックスの実施効果想定や媒体購買、クリエイティブの実施効果測定だけでなく、企業経営、マーケティングミックス、プロモーションミックスの段階における広告効果を測ることを忘れてはいけない。JAAの調査で、広告宣伝部門の業務として広告効果測定がトップに上がっている点は評価できる。だが、この効果測定が媒体購買達成測定やクリエイティブ評価測定で終わっていないことを祈るばかりである。
広告主企業は広告費の有効化、効率化、ROIなど広告費の説明責任という課題が十分に解決できていないと言われている。多くの広告主はこの課題を主にコスト・セイビィングという形で対応しているようだが、コスト・セイビィングだけでは広告費の効率化はできても広告の効果に対する説明は達成できない。売上に最終的にどのように寄与できたのかを説明していかなければ、広告やコミュニケーション部門の存在意義が薄れていくことになる。広告部門が広告効果やROMIといった広告費についての説明責任を十分できないでは、経営トップから見れば、お金の使い方が曖昧で、説得力がなく、企業業績との尺度を示せない、ただのコストセンターそのものに映ってしまうのだ。効果を証明できなければ、予算はコストとして削られていくだけで、この問題に正面から向き合うことが、広告部門には必要になる。
コンサルティング監査の活用
「広告によってどれだけ商品が売れたか」、「どれだけ利益をもたらしたか」は広告だけでなく、さまざまなマーケティング要因が影響するので、広告効果を「広告投下と売上や利益の相関」で評価するのは適切ではないといった声が多くある。では広告費はどうやって予算化されたのだろうか。この点から答えを出す限りにおいて逃げられる問題でもない。
各企業には監査部という部署が存在し、お金の流れに関しての監査が定期的になされているはずだが、お金の流れの不正発見が主で企業経営に関するシステムや運営、目標達成へのプロセス等にまでの監査が行われているところは少ない。たとえ外部の会計監査法人が入っていても経営危機に陥るまでは経営実態の監査までは至っていないところが多い。進んだ企業ではコンサルティング監査を導入していることもある。コンサルティング監査とは、マーケティングにおける広告活動が健全なセールスと利益に結びつくようにステップに沿った流れの中で、互いに連携しているかどうかにも光をあて、加えてそれらが確実なアクションに結びつけられるようにすることにある。そのプロセスはビジネスプランの年間実施計画と年間ターゲットに沿って行われることになる。単に成果確認だけの監査でなく、以下の行程の評価、計画予測の評価、成果達成の評価も行うことになる。
- 行程の評価:マーケティング・コミュニケーションのプロセスは計画、実行及び進行中のセールスマーケティングの計画と必要性に応じて正しいアクションを取っているかの実施行程評価
- 計画予測の評価:販売売上計画のアウトプットとしては将来のマーケティング費用や営業費などとブランド計画及びセールス計画における販売量の予測を含む
- 成果達成評価:販売売上計画と管理マネージメントの成果は、高レベルの売上目標と売上成長率などのKPIに対しての達成数値で測定する
販売と広告の関係を調べるうえで、マーケットシェアや利益などキーとなるKPIのブランドパフォーマンスはその計画に対してしっかりとモニターされているかどうかを監査することも必要になる。加えて、数あるSKU(ストック・キーピング・ユニット)やブランドのどれだけが利益に貢献し、あるいは貢献していないかを査定することも必要になる。また、利益達成のために広告宣伝販促費の予算カットが行われていないかを判定することもチェックポイントだ。顧客に関するレポートは顧客とのビジネスで生じたコストが反映されているかを正しく検証することも重要になる。そして期末に発生するセールスの集中においても、その売上が異常に作られていないかを判定し、トレードプロモーションは事前と事後評価で検証されているかもチェックすることになる。
販売や利益と広告効果は広告だけでなく、さまざまなマーケティング要因が影響するからこそ上記のようなステップを踏むことになる。そのため経営層、製品マーケティング部、営業部、調査部などの社内組織や広告会社などの関係会社に忖度することなくフェアに検証評価ができ、広告ビジネスに知見を持つコンサルティング監査を行う中立的外部会社(*1)に任せることも一案である。コロナ禍だからこそ広告費は有効に使われたかを検証し、成果確認を疎かににしてはいけない。
広告投資を最大化する
広告主にとって広告投資を最大化することは「言うは易く行うは難」のテーマである。だがステップを正しく踏むことで近接できる。広告投資を最大限利用する第一段階は、ビジネスの目標を達成する為に「予算の優先順位」をつけること、第二段階はターゲットに響くメッセージは何かを決めること、第三段階は最大限の効果を得るために適格なタッチポイントに予算配分をし、第四段階は最高の実施運営によるインパクトの最大化を図り、そして第五段階は効率的な購買をマネージすることで可能になる。マーケティング上において予算の優先順位をつけること。常々、マーケティングROIを追求している会社では、この段階においてモデリングを使い、あらゆるマーケティング活動においてどんな活動がビジネス目標を達成する上で有効かの優先順位を決めている。販促活動が優先なのか、広告活動が優先なのか、広報活動を優先させるのか、ビジネス目標の設定によりいろいろな活動が、ROIやKPIなどとともに検討されることになる。
広告コミュニケーション効果としてさまざまな効果が考えられる。認知や理解を促す知識効果、好意的・否定的な態度形成を促す感情効果、購買・消費・推奨に結び付く行動効果、過去からの積み重ねによる累積効果もある。これらの効果を広告費と比べていくことは可能なはずだ。それが費用対効果であり、投下量によって測る量的効果や知識、感情、行動での質的変化も効果測定可能なはずだ。例えば、広告費や媒体費及び投下量(GRPなど)と売上、利益、広告認知、ブランド認知、購入意向を対比させて成果をみることもできる。 マーケットシェアとシェアオブボイスを使って成果をみることも可能である。長年の測定値や毎月の変動推移をローリングで検証することで 累積効果も見ることができる。 長年の比較をすることで、数値目標と広告費ROIも容易に設定が可能になる。勿論、業界全体、業種、企業内ブランド各種と広告費と売上の関係を対比していくことも成果確認の材料になる。
リターンは何かを示せ
何度も言うが、マーケティング支出はすべて何らかの成果をもたらすための投資だ。従って、それは短期的(すなわち、プロモーションなどでの短期的なセールスの押し上げ)リターン、あるいは長期にわたる投資(つまりブランド資産の形成)として返ってこなければ意味がない。リターンを顕在化した行動だけで効果を判断するのでなく、パーチェスファネルに沿った消費者の心理に起こる変化でも見ていく必要もある。長く、広告費はマーケティング施策上での費用ウエイトが高い割に、その効果が計りにくいものとされている。だからこそ、広告を行った結果を常にチェックする「広告効果測定」が必要になる。広告はしたけれど、その効果測定もせずに「何が良くて、何が悪かった」はわからないでは、費用の無駄使いをしたと言われてもしかたがない。JAA各社がその広告効果測定が何であれ取り組まれている点は良として、広告投資に対するリターンが何であったかを検証されることを期待したい。
(*1)Truestar Consulting Group (株)では広告投資のコンサルティング監査も行っている。パフォーマンスだけでなく、プロセス、ワークフロー、検証データの質、社風相性、過去からの引きずり、リスク回避などの項目も含めて社内各部署に中立的にアドバイスを行っている。
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