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大企業もボイコット、SNS広告の倫理性

大企業もボイコット、SNS広告の倫理性

投稿日:2021年8月20日/更新日:2021年8月23日

sns ads boycott

去年の夏アメリカでは、デジタル広告を行う様々な大企業を対象としてFacebook上での広告を停止することを呼びかける “Stop Hate For Profit” というキャンペーンが行われました。キャンぺーンの目的は、その名の通り、Facebook上で様々なヘイトスピーチやフェイクニュースが拡散されている問題に対しての解決をFacebookに促すことであり、アメリカの大手通信会社であるVerizonや、世界的消費財メーカーのUniliverなどの広告主も賛同しました。しかし、なぜ企業によるデジタル広告を停止することがヘイトスピーチを撲滅させることにつながるのでしょうか?実は、様々な専門家がインターネット上で起きてる多くの問題は、デジタル広告に関連するユーザートラッキングやアルゴリズムなどに起因していると主張しています。現代のデジタル広告市場が、悪質な誹謗中傷、過激で誤解を招くコンテンツを激増させているのです。そのソーシャルメディア広告のメカニズムについて見ていきます。

炎上しやすい、過激なコンテンツに恩恵を受けるソーシャルメディア

FacebookやTwitterなどの企業は、利益のほとんどを広告収入から得ています。ユーザーにとって利用料が無料であるソーシャルメディアですが、その収益はユーザーがSNSを利用している時間に比例します。なぜなら、ユーザーの利用時間が増えることで広告を表示する回数やより最適な広告表示のためのユーザーデータを収集する機会が増えるためです。ソーシャルメディア企業は、ユーザーを夢中にさせるプラットフォームの構築とデザインに注力してきました。また、プラットフォームのデザインに加えて、人々がSNSに夢中になる理由はそのコンテンツにあります。

しかし、人々の注目を集めるコンテンツは、過激で物議をかもすような内容であることが多いのです。これこそがソーシャルメディアとヘイトスピーチの関係性であり、問題点であると指摘されています。

ユーザーを夢中にさせるアルゴリズムとその影響力

ソーシャルメディアの多くがアルゴリズムによって、ユーザーの興味関心とマッチするコンテンツを表示していますが、そのアルゴリズムの目的はやはり、「ユーザーを夢中にさせ、利用時間を増加させること」にあります。人々をSNS上に居続けさせるために、アルゴリズムは内容が事実とは異なったものだとしても、その人が見たい・聞きたいコンテンツを表示し続けます。このような不健康な循環とユーザーの搾取は社会に悪影響を及ぼしかねないと指摘されています。Facebook社の内部による調査レポートでも、アメリカ国内の過激派組織への加入者の64%はFacebookのレコメンデーション機能に起因するという結果が報告されています。

ユーザーの注目を集めるためにアルゴリズムによって優先的に表示されている過激なコンテンツの多くは、偽情報-いわるゆフェイクニュース やヘイトスピーチとして分類されるとも言われています。

一方でFacebook社は、これらの指摘に対して異論を唱えています。Global Affairs and Communication部門の副代表であるNick Cleggは、ブログ投稿上で「人々は、良い体験を求めて、FacebookやInstagramを利用している。ユーザーや広告主である企業は悪質なコンテンツを見たいわけではない。Facebookにとっても、同様であり、そのような悪質なコンテンツについては排除していく。」とコメントしています。

広告ボイコットに効果はあったのか ― これからの課題

実際にはFacebook社にも、悪質なコンテンツを排除したいという思いがあるのかもしれません。しかしながら、1に何十億もの投稿を人の手でトラッキングすることは現実的に不可能です。また、AIを活用した自動トラッキングシステムも、ヘイトスピーチなど文脈の曖昧さなどを機械で判別できないという弱点があります。

このような課題背景の上で、Facebookの広告主である大手企業の広告出稿を停止した”Stop Hate For Profit” のボイコットはどれほどの影響があったのでしょうか。根本的には何も変わっていません。ボイコットに参加した企業は大手企業であっても、Facebook の全体収益にそれほど霊教を及ぼさなかったためです。Facebookの広告主のほとんどは大手企業ではなく、中小企業なのです。

SNS上での誹謗中傷や偽情報の拡散はまだまだ対処が難しいのが現状です。解決するためには、ソーシャルメディアのユーザーの注目を引くためのアルゴリズを理解し、分析することが重要です。また、自動トラッキングのテクノロジーの進化についても期待できるかもしれません。しかし、現時点では、SNS上のデジタル広告とヘイトスピーチにはこのように切っても切れない関係が存在するのです。

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☞ SNSが持つポテンシャル

☞ SNSデータから消費者傾向を把握する

WIRED “Follow Money: How Digital Ads Subsidize The Worst of the Web” / Gilad Edelman (https://www.wired.com/story/how-digital-ads-subsidize-worst-web/)

 

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