マーケティングに変革？「Marketing GPT」と「Commerce GPT」とは？-

投稿日：2025年8月12日／更新日：2025年8月12日

6月7日、セールスフォースは年次カンファレンス「Connections」にて生産AIツールであるMarketing GPT・Commerce GPTを発表しました。セールスフォースは、これらのツールが企業と顧客のインタラクションに変革をもたらし、従業員の生産性を劇的に向上させると述べています。本記事では、発表されたツールが持つ特徴の概要について説明し、市場にもたらす影響についても考えていきたいと思います。

Salesforceが発表した「Marketing gpt」と「Commerce GPT」

　　　　　　　　　　　　　　　　左がMarketing GPT　右がCommerce GPT　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　引用：Salesforce

Marketing GPT・Commerce GPTとは

前述のようにMarketing GPTとCommerce GPTはセールスフォースが発表した生産AI技術を用いた最新のツールです。Marketing GPTは、ブランドが消費者に広告を配信するための支援を目的とし、Commerce GPTは、企業が顧客のニーズにパーソナライズされたショッピング体験やカスタマイズされたオファーの提供支援を目的としています。

「GPT」ツールとして宣伝されていますが、Marketing GPTとCommerce GPTはChat GPTと同じ基盤で構築されているわけではありません。GPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、Open AIが開発した大規模言語モデル(LLM)の一種です。セールスフォースの新しいツールは、Chat GPTだけでなく、他のLLMも実際に活用することができます。

Marketing GPTについて

Marketing GPTは、AIと連携したユーザーインターフェースを提供し、キャンペーン概要の構想、オーディエンス/セグメントの発見、コンテンツ制作を強化することを目指します。

発表されたMarketing GPTの機能は以下のようなものがあります。

・Segment Creation

オーディエンスセグメントを迅速に作成し、自然言語プロンプトを使用して、ターゲティングを改善する機能です。AIの推奨により、キャンペーン全体のエンゲージメントを高める最もインパクトがあると予測できるセグメントを生成することも可能です。

・Email Content Creation　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

メール本文のコンテンツ構築や件名の提案作成、過去のキャンペーンで成功したコンテンツを用いてメッセージの作成ができます。また、パートナーシップを組んだTypefaceにより、ブランドガイドラインに沿った画像やレイアウトを提供できます。

・Segment Intelligence for Data cloud　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

セグメントインテリジェンスにより、マーケターはオーディエンスセグメントに対するキャンペーンのパフォーマンスを理解することができます。ファーストパーティデータ、収益データ、有料メディアデータを自動的に接続することにより、ROIを証明することができます。

・Rapid Identity Resolution, Segmentation, and Engagement。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

この機能により、デバイス、ブラウザ、チャネルを問わず、ユーザーの完全な理解を構築することができます。これは顧客のアイデンティティを自動的に解決し、データクラウド内のセグメントを更新して最新の正確性を確保することによって実現されます。

セールスフォースは、これらの機能により、マーケターは、時間のかかる平凡な作業に費やす時間を削減でき日々の効率化を図れると述べています。また、より高度なパーソナライゼーションを実現するためのコンテンツ制作に力を入れ、クリエイティブな力を発揮することができると説明しています。

Commerce GPTについて

Commerce GPTは、AIと連携したユーザーインターフェースを提供し、小売業者には新しいストアフロントの作成と目標に向けたガイダンスを、買い手には会話型コマースを加速させることを目指しています。

・Goal based commerce 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

成長とコンバージョン戦略を自動化し、ユーザーの生産性を最大化するのに役立ちます。

このツールは、目標を設定すると、それに応じた具体的なインサイトと積極的な推奨を提供します。例えば、利益率の改善や平均注文金額（AOV）の増加などを実現するための方法を提案します。また、プロンプトを入力することで、ユーザーの意図を理解し、ストアフロントのデザインや商品陳列の設定、プロモーションを推奨します。

・Dynamic Product Descriptions　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

複数の説明や翻訳のバージョンを作成する作業を加速します。

製品の説明を作成する作業が軽減されることで、新しいストアフロントをこれまで以上に素早く展開することができます。また、売り手のために欠落しているカタログデータを自動的に補完し、各バイヤーに合わせた自動生成の製品説明で顧客体験を革新することも可能です。

・Commerce Concierge　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ボット技術と生成技術を使用して、ブランドがあらゆるメッセージングチャネルで1対1のショッパーエクスペリエンスを提供するのに役立ちます。

可能性/まとめ

発表によると、上記のツールは今年10月頃から段階的に公開されていきます。Ai生産技術が注目を集めMarketing GPTやCommerce GPTのような特定の領域に特化したAI生産技術の発表は、これらの技術が産業や私たちの生活に深く関わっていく兆しを感じさせます。セキュリティや有効性の点が未だ課題にありますが、いずれこのようなGPTツールが仕事のあり方や生活に変革をもたらすのではないでしょうか。

ですが、これは諸手を挙げて喜べることなのかは、一考する必要があります。このようなAI技術の急速な発展に対し、3月には、Elon Muskを含む1,000人以上の技術リーダーと研究者がAI開発の一時停止を呼びかけました。また、OpenAIのCEOであるSam Altmanを含む350人の専門家は先週、AIが人類にもたらす絶滅レベルのリスクについて警告する公開書簡に署名しました。このような憂慮を抱えながらも、今後AI技術は更なる発展を遂げ、GPTツールもより広範で専門的な活用がされるようになるでしょう。私たちの生活を大きく変えるであろうAI生産技術に注目していくことが必要でしょう。

参考

Salesforce “Salesforce Unveils Marketing GPT and Commerce GPT to Personalize Every Campaign and Shopping Experience with Generative AI”

Adage “SALESFORCE UNVEILS GENERATIVE AI TOOLS FOR MARKETING AND COMMERCE“