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「アドフラウド」で消える広告費!不正の手口と予算を守る実践対策

「アドフラウド」で消える広告費!不正の手口と予算を守る実践対策

投稿日:2025年10月3日/更新日:2025年10月2日

「アドフラウド」で消える広告費!不正の手口と予算を守る実践対策

デジタル広告への投資を増やし続けている企業にとって、最も恐ろしい敵の一つがアドフラウド(広告詐欺)です。これは、ボットや不正なプログラムを使って、人間に見せかけることなく広告を大量に表示・クリックさせ、広告費用をだまし取る行為を指します。

実際、Spider Labsの調査によれば、2024年日本国内におけるアドフラウドによる広告費の被害額は年間で推定1,510億円にのぼります。つまり、あなたの会社が投じた広告予算の一部も、誰にも見られないまま不正なウェブサイト運営者や犯罪者に奪われている可能性があるのです。

アドフラウドを放置すれば、広告の費用対効果(ROI)が悪化するだけでなく、リード獲得の質が低下し、効果測定を誤らせ、経営判断をゆがめるリスクすら生じます。

本記事では、この見えにくい脅威であるアドフラウドの具体的な手口を解説し、企業が大切な広告予算を守るために今すぐ実行できる実践的な対策をご紹介します。

 

アドフラウドの種類

アドフラウドは巧妙に進化しており、その手口は多岐にわたります。ここでは、広告主の予算を不正に消費する代表的な手口を解説します。

ボットによる不正クリック(Bot Traffic)

最も一般的で古典的な手口です。人間ではなく、自動化されたプログラムであるボットが、ウェブサイト上で広告を大量にクリックしたり、インプレッションを発生させたりします。
具体的な手口: 犯罪者が構築した不正なサーバーネットワーク(ボットネット)が、正規のユーザーに見せかけるためにIPアドレスを偽装しながら、広告枠があるページを訪問し、広告をひたすらクリックします。このクリックには購買意図が全くないため、広告主にとっては完全に無駄な費用となります。

アドスタッキング(Ad Stacking)

これは、一つの広告枠に複数の広告を重ねて配置し、ユーザーが実際には見ていない広告にもインプレッションが記録されるものです。
具体的な手口: サイト運営者が、ユーザーの画面の見えない場所や非常に小さいピクセルの広告枠の中に、複数の広告を重ねて(スタッキングして)表示させます。ユーザーには最上位の広告しか見えていませんが、プラットフォーム側には重ねられたすべての広告のインプレッションが計測され、広告主は表示されていない広告に対しても費用を請求されてしまいます。

サイト偽装(Domain Spoofing)

広告主や代理店を騙し、価値の高い正規サイト(例:大手ニュースサイト)に広告を出稿したように見せかけて、実際は価値の低い不正サイトに広告を表示させる手口です。
具体的な手口: 不正業者が広告リクエストの情報を偽造し、入札時に大手ブランドのドメイン名を騙って申告します。これにより、広告主は安全で信頼性の高いメディアに広告が出たと思い込みますが、実際は質の低い、あるいは不正なコンテンツのサイトに表示されています。

ファームによる不正トラフィック(Click Farms / Traffic Farms)

ボットではなく、人間を組織的に使って不正を行う手口です。
具体的な手口: 低賃金で雇用された人々(ファーム)が、指示されたウェブサイトを訪問し、広告をクリックしたり動画を再生したりして、自然なユーザー行動を装います。ボットと異なり、人間による行動であるため、不正検知システムをすり抜けやすいという特徴があります。

 

これらのアドフラウドは、単に広告費を浪費させるだけではなく、効果測定モデルや予算配分の判断そのものを誤らせるリスクがあります。特にMMMのように過去データを基に分析する手法では、不正データが混ざることで成果評価が大きく歪められてしまいます。

 

 

実践対策

アドフラウドの脅威から大切な広告予算を守るためには、受け身になるのではなく、広告主側が積極的にデータを確認し、対策ツールを導入することが不可欠です。今すぐ実行できる具体的な3つのアクションを紹介します。

ビューアブルレート(Viewable Rate)を確認する

広告が見られたかどうかを測る指標を徹底的にチェックしましょう。アドフラウド対策の基本は、「本当に人間に見られた広告」にのみ費用を支払うことです。

具体的なアクション:

  • ビューアブルレートの基準理解: 広告がユーザーのブラウザ画面内に50%以上表示され、かつ1秒以上継続された場合に「ビューアブル(視認可能)」と認められます。この基準を満たしているか、配信プラットフォームのレポートや第三者ツールで確認します。
  • 基準に満たない枠の除外: ビューアブルレートが極端に低い(例:20%未満)配信先や広告枠は、アドスタッキングなどの不正が行われている可能性があるため、配信先から積極的に除外設定します。

第三者測定ツールを活用する

広告プラットフォームが提供するレポートだけでは、アドフラウドを見抜くことは困難です。広告主とは独立した第三者機関の専門ツールを導入し、不正トラフィックを検知・除外する仕組みを構築しましょう。

具体的なアクション:

  • ツール導入の検討: IASやDoubleVerifyといった、アドフラウド検知とブランドセーフティに特化したツールを導入します。これらのツールは、IPアドレスやクリックパターンなどから不正なボットトラフィックをリアルタイムで検知し、広告の配信をブロックします。
  • 連携と設定の徹底: 導入後、自社の広告配信システム(DSPなど)との連携を完了させ、不正なインプレッションを計測から除外したり、入札対象から自動で除外したりする設定を徹底します。

透明性の高いプラットフォームと取引先を選定する

不正が起こりにくい、透明性の高い環境での広告取引を意識的に選ぶことで、リスクを大幅に減らすことができます。

具体的なアクション:

  • 認定パートナーの活用: TAG(Trustworthy Accountability Group)など、業界団体からアドフラウド対策の認定を受けているプラットフォームやサプライヤー(広告枠の提供元)を優先的に選びます。
  • 配信先の選別(ホワイトリスト): 大手ニュースサイトや信頼できる専門メディアなど、ブランドセーフティが確保されているメディアを厳選したホワイトリストを作成し、そこにのみ広告を配信するように運用を切り替えます。
  • 取引の透明性要求: 広告代理店に対し、不正トラフィックの除外実績や使用している第三者ツールのレポートを定期的に提出するよう求め、透明性の高い取引を要求しましょう

 

こうした基本的なアクションを日常の広告運用に組み込むことで、不正に消える予算を防ぎ、広告のROIを守る体制を着実に整えることができます。

 

まとめ

アドフラウドは、デジタル広告のROIを静かに蝕む見えにくい敵です。これを放置すれば、企業の大切な広告予算が不正に吸い取られ、意思決定の精度まで歪めかねません。しかし、手口が巧妙化しているとはいえ、広告主が能動的に防御を固めることで被害を最小化することは十分に可能です。

本記事で紹介した「ビューアブルレートの厳格な確認」「第三者測定ツールの導入」「透明性の高い取引先の選定」は、いずれも今日から実践できる基本アクションです。これらを日常の運用に組み込むことで、広告予算を守るだけでなく、データの信頼性を高め、長期的なROI改善につなげることができます。

正しいデータ基盤の上にこそ、MMMのような高度な分析や戦略的判断が成り立ちます。今こそ、自社の広告運用を見直し、「追いかけられる広告」から「成果を導く広告」へと進化させるときです。

 

参考

https://jp.spideraf.com/press-releases/researchreport-2025

https://jp.spideraf.com/articles/advantages-of-implementing-ad-fraud-countermeasures

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