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コロナで打撃を受けた広告・メディア業界は変化し進歩できる
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コロナで打撃を受けた広告・メディア業界は変化し進歩できる
爺の雑言5 – コロナで打撃を受けた広告・メディア業界は変化し進歩できる
10月中旬に8回シリーズのマーケティングセミナーを終了した。すべてデジタルオンラインという変則の形で行った。とは言っても、今回はマテリアル作成を含み講師役をtruestar hd(株)の戸塚佳子さんに任せて、セミナーの監修アドバイザーとして参加しただけだから、meetというツールにも戸惑うことなく望めた。セミナーをしながら思うのはマーケティングの本質は変わらないということだ。消費者を理解する消費者中心主義であり、WhatとHowだけを重視するのでなくWhyからマーケティングは始めるべきだということを再認識したひとときだった。
10月下旬には、大塚家具の大塚久美子社長の辞任、ニトリとDCMの島忠家具へのTOB合戦と家具業界のニュースが賑やかしかった。大塚家具の場合は「失敗のケーススタディ」として、そして家具業界は「業界再編のケーススタディ」としての題材に使えると思ってしまう。
そして11月3日には米国の大統領選挙があった。トランプ大統領が負けを認めていないので混乱が続いている。そういえば、トランプさんには前回の選挙戦をマーケティング及び戦略のセミナー材料にさせてもらったが、今回の選挙も題材には使えそうだ。
ここにきてコロナが再び全国に拡大してきた。そしてGoToキャンペーンとオリンピックについての議論も盛んだ。コロナが倒産、給与やボーナスの減額、人員削減など経済及び個人消費に影響を与える中、爺は「GoToトラベル」には条件付きで賛成だった。厚生労働省推奨の「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」あるいは「PCR検査パスポート」の導入を一緒に実施していればよかったのだ。税金を使うのだから特典を得る人には少しの義務つけをして実施してもかまわないだろうと思うのだ。そうすれば、コロナが拡大しても追跡調査が可能となりコロナ対策と経済を回すことが機能すると思ったのだ。
コロナ禍で広告とメディア業界にも大きな打撃が生じている。コロナによる影響は暮らし方、働き方、生き方、行動に変化をもたらしている。だが、変化がある時は進歩も生まれる。広告とメディア業界も変化から進歩を生み出すタイミングかもしれない。
コロナで打撃を受けるテレビ
2月下旬からテレビのHUT(総世帯視聴率)が上昇し、前年を上回っている。特にニュースや情報番組の視聴が伸びている。コロナへの恐怖が信頼できる情報をテレビに求めているようだ。テレビ離れの若者世代もテレビを見ていることをビデオリサーチの調査結果は示していた。民放連研究所が6月に発表した「新型コロナウイルス感染拡大時における情報メディアの評価」では、コロナ関連情報収集利用にテレビが63.2%で圧倒的に高く、ニュースサイトアプリ38.2%、新聞31.3%を大きくひきはなしてトップであった。
しかし信頼と広告費が結びつかないのが、このコロナの災いである。日本アドバタイザーズ協会(以下JAA)は月刊JAA6月号と7月号の中でコロナの影響アンケート調査結果を掲載していた。回答数が1回目調査は52社、2回目は38社と少数ではあるが傾向はわかる。コロナによる広告出稿への影響は、「緊急事態宣言」以前は71.4%だったのが、発令時は86.8%に上昇している。多くの会社がなんらかの影響を受けたようだ。影響を受けた媒体は(以下1回目、2回目調査結果で示す)テレビ(85%、69.7%)とデジタル(62.5%、51.5%)とやはり広告費の多い媒体が影響を受けていた。その影響は出稿素材の変更(66.7%、46.9%)、出稿の取りやめ(53.8%、65.6%)、出稿の縮小(51.3%、68.8%)に出ている。AC素材に出稿素材を変更した社(7.7%、9.4%)は少なかった。差し替えした社では、報道番組のみでは(75%、25%)だったのが全番組(25%、75%)へと拡大していったようだ。
広告主企業の収益悪化による広告費削減と社会的自粛により、4月以降テレビ局の広告収入や事業収入は激減している。8月6日の民放キー局の今年度第1四半期決算によると、各局CM収入が大きく減少し、番組制作費は軒並み削減されていることがわかる。タイムCM収入では日テレが290億7,000万円(前年度期比マイナス1.1%)、TBSテレビは189億6,500万円(マイナス10.2%)、フジテレビ196億3,600万円(マイナス10.3%)、テレビ朝日185億6,700万円(マイナス10.6%)、テレビ東京103億6,200万円(マイナス13.1%)と日テレ以外は10%以上のマイナスになっている。タイムCM以上に影響を受けたのが、スポットCMだ。日本テレビは196億4,700万円(マイナス36.6%)、TBSテレビ141億3,100万円(マイナス33.4%)、フジテレビ154億円(マイナス35.3%)、テレビ朝日152億600万円(マイナス33.5%)、テレビ東京45億9,400万円(マイナス29.1%)と深刻な状況になっている。視聴率不振のフジテレビが視聴率の取れているテレ朝やTBSより売上が大きいのがこの業界の不思議だが。収入減は各局の番組制作費にも影響を与えている。日本テレビの番組制作費は185億6,800万円(マイナス24.9%)、TBSテレビ131億8,600万円(マイナス31.9%)、フジテレビ138億1,800万円(マイナス25.9%)、テレビ朝日149億7,800万円(マイナス28.8%)、テレビ東京71億7,300万円(マイナス24.8%)と各局で2~3割減となっている。このことは番組制作下請会社にも影響を与えることになる。
特にここ数年将来に懸念があったローカルテレビ局はさらに深刻な状態だと聞く。逆にこのコロナ禍を機に、経営基盤の強化と自らのビジネススキームの立て直しをして欲しい。今までのしがらみからきっぱりとおサラバして、思い切り舵をとれるチャンスとも言える。
今のテレビ局には世の中の変化に素早く対応するスピード感が足りないといわれているが、コロナの影響は広告費収入減がこれからも長く続くと予測しなければいけない。CMという放送収入の厳しさは放送局の体力を急激に弱める可能性がある。旧来型CMによる放送局型ビジネスから脱皮し、新しいビジネスモデルへの構築は愁眉の急ともいえる。
コロナ禍で広告の停止は必要か
JAAの調査結果でもわかるように、コロナによる広告出稿への影響は大きい。コロナ禍の時期に企業ははたして広告をする意味があるのだろうか。引きこもり状態を求める「緊急事態宣言」時には「売らんかな」の広告はマイナスであることは誰でも考えることである。かといって「コロナに関係する広告」を急遽作成し流すことなどには意味はない。広告に思慮と分別が求められる時期なのだ。こんな時期こそ、企業が今までしっかりとブランド育成のコミュニケーションをしていたかどうかが現れてくるのだろう。「パレットの法則(80対20の法則)」を思い出そう。「20%の顧客が80%の売上を支えている」と考え方だ。普段から少数優良顧客を大事に扱いリレーションを保つコミュニケーションしてきた企業はマスコミュニケーションを少しの間停止しても影響は少ないないだろう。人々の買い物に行く時間は通常より短くなり、購入決定までの時間も早くなっている。そうなると、消費者の多くは日ごろ慣れ親しんだブランドを選ぶ傾向がある。何事にも不安のある時期、消費者は信用を重視するのだ。新しいブランドよりも世間で認知・確立された安心ブランドを選ぶので、ブランド力が最も試される時期でもある。消費者は、伝統と名声のあるビッグブランドに関心を高める時期なのだ。
一方、「コロナ対策と経済復興の両立」を目指す時期は、「顧客基盤の拡大なしでは、ブランドが持続的、本格的な成長は遂げられない」という基本に立ち返るタイミングの見極め時期にもなる。自粛疲れによるリベンジ消費に対応すべく、マスマーケット向けのコミュニケーションが必要となるのだが、「売らんかな」の広告にはまだ共感は得られないだろう。消費者インサイトの変化を見逃すことなく、変化への積極的な対応がマーケターには求められる。
広告代理店も変化が求められる
散歩以外、外出をほとんどしないので、NetflixやAMAZONプライムを毎日見る。「愛の不時着」での、KitKatやDolceGustoのプロダクトプレースメントの自然さに感心した。そして、1960年代初頭のニューヨークの広告代理店を題材にした「MADMEN」は、実に楽しめる。シリーズ1を見始めたばかりだが、主役は華やかな広告業界で働く、クライアントに信頼を得ている敏腕クリエーティブ・ディレクターで、新人女性が広告クリエイティブでの地位と出世物語でもあるようだ。職場の煙草、酒、セクハラなどが問題になっていない、古き(男達にとって)良き時代の広告業界の欲望と葛藤が描かれていている。新人女性を社内案内する場面では、「メディア部、売上の9割を担う。新聞や看板、テレビやラジオの枠を買うのが仕事だ。それがすべてかな。大したことはしていない。アイディアでなく15%上乗せして枠を売っている。クリエイティブなんてただの飾りさ」と言う場面が印象深い。テレビが出始めの頃でプリント媒体主役の時代だが、広告代理店が媒体コミッションで荒稼ぎしていたことがわかる。
長くテレビが媒体の主役として君臨していた時代が終わり、デジタルが主役に躍り出たが、広告代理店が媒体手数料で大きく稼ぐビジネスモデルは変わらない。特にテレビの手数料は大きく、ネット媒体が育成期の時代、その成長を支える原資でもあった。そのテレビが不況に陥ると、広告代理店のビジネスモデルは徐々に壊れていく。
電通の2020年1~9月期の連結決算(国際会計基準)によると、売上収益は9%減の6,763億円だった。媒体別の売上高はテレビが15%減の4,268億円、新聞が23%減の416億円と大きく落ち込み、早期退職の募集、出張費や交際費などのコスト抑制を図っているが営業利益は50%減の185億円だった。そして、一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を始めるようだ。2021年1月から全体の3%に相当する約230人を切り替える予定にしている。今までも優秀なクリエイターは、独立して個人事務所を立ち上げ成功している例は多い。知の集団であるクリエイティブ部門の人々が、この制度を利用するのだろう。これにより報酬制度の改革が急激に進む可能性を秘めている。
報酬制度は変わる?
月刊JAA2020年4月号に覆面座談会「わが社はこうしている。広告会社との取引」が特集されていた。これを読んですぐに思ったのが、10年前から、いやそれ以前からの広告主の悩みが変わっていないと感じたことだ。それよりも6社の方々が覆面で話をされている点も今更感をいだかされた。広告会社との取引(報酬制度、契約書、広告会社評価、監査)について自社の詳細を語るわけでもないのに、堂々と語りあえないのか不思議である。
先に記した、電通の業務委託契約「個人事業主」制度は、メディアのグロス売上のサービスとして長い間存在していたクリエイティブがフィで堂々と稼げることになるはずだ。そして優秀なクリエイターは、仕事(広告主)を選ぶこともできる。クリエイティブ部門がフィならメディア購買、アカウント部門などの報酬も変わらざるを得ない。報酬制度、契約書、広告会社評価、監査について再考時期が到来したと考えるのは早計だろうか。
広告取引について広告主だけで広告会社との交渉に不安があり、コンサルティングを望まれる広告主、広告会社は、Truestar Consulting Group(株)に相談されたらいい。報酬制度、契約書、広告会社評価、監査に知見があり、広告主と広告会社からのヒアリングから解決策、そして契約書締結まで手助けできるはずだ。
今こそ変化の時
2005年前頃から、インターネットがメディアプランのひとつに加えられ、メディアニュートラルという考え方が広まっていった。新しいメディアが登場すると、マーケターはメディアの選択肢が増え、広告費配分も複雑になって、得られる費用対効果も低下しコスト高になっていた。しかし今のメディア界の状況は以前よりシンプル化してきている。紙からスマホ、タブレットなどのスクリーンに変わり、新聞、雑誌、テレビもオンラインメディア中心に変らざるを得ない時代になってきた。ラジオがラジコで新しい顧客を獲たように、旧四媒体は現状打破できるはずだ。新聞、雑誌もブランド力があれば、信頼媒体としてスクリーンになっても稼げるようになるはずなのだ。ネット上で記事使用、転用された場合は、GoogleやFacebookなどから十分な課金(広告料からの配分)を得ることができるようになるべきだ。政府は著作権保護の観点からもこのことに力を注いで欲しい。
テレビ放送もオンラインに各局進出したが、1回目にも書いたが、オンラインは放送と違って個を相手にする。民放各局がバラバラに動かず、有料、無料(CM)を一つにしたフリーミアムの動画サイトで動くべきである。個である契約者は同時にいくつもの画面は見ることはできないし、有料の契約金もいくつものサイトに払う余裕はない。民放各社の相手はNetflixやAMAZONプライムそしてNHKプラスなのだ。
NetflixやAMAZONプライムを見ながら思うのだが、ドラマのシリーズ物は時間があれば、一気に見たいし、時間が無ければ、自分のキリのいい時に止めることができる。放送とネットを持つことになったテレビ局は、(WowWowやスカパーがよくやる第1回はフリーで続きは有料の方式を参考にして、)シリーズ第1回目はフリーでテレビとネットで放送し、続きはネットで有料とし各回を一日毎に追加していく。シリーズ終了後はプレミアムネットでは好みで一気見を可能にする。そしてテレビ放送とフリーネットでは改編期1期遅れで放送する「主(テレビ)従(ネット)逆転」したアプローチはいかがだろうか。きっとテレビ各局はそんなことはとっくに考えているとの答えが返ってくるのは承知であるが、今からの時代、できないことを並べ立てるより、できるために何をするか。それは何故しなければいけないのかを考えて業界で取り組んで欲しい。「最近のテレビ番組はニュースやワイドショーもバラエティ化され、朝から晩までバラエティのオンパレード」という声も聞くが、まだまだテレビコンテンツは信頼性が高く、玉石混交のネットコンテンツに比べてCMとの相性は良い。それはネット放送においても変わらないはずだ。テレビ局は共感を呼ぶコンテンツ作りに力を注ぐべきだ。そしてコンテンツからのコミュニティをつくる視聴者とのエンゲージメント作りなどにも歩を進めて欲しい。
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