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想像力と創造力

想像力と創造力

投稿日:2021年1月13日/更新日:2021年6月22日

爺の雑言6 – 想像力と創造力

できる為に何をするか

新年を迎え新しい気持ちで書こうと思っていたが、年末のNHK BSプライムの番組表を見て驚いた。公共放送とは言いながら、31日13:00から新年の13:30まで「年越し映画マラソン」と称してずうっと映画を放送していたのだ。手抜きにも程がある。NHKの料金問題が世間を賑あわせているにもかかわらずだ。NHKが考え実施している公共放送は何なのか?疑問は高まるばかりだ。

内閣官房参与の高橋洋一嘉悦大学教授が唱える「Eテレ売却論」とNHKの前田晃伸会長の「教育テレビはNHKらしさの1つの象徴だと思う。それを資産売却すればいいという話には全くならないと思う」の対立が話題になっているが、高橋内閣官房参与の意見を支持したい。何故なら、高橋内閣官房参与はEテレの全番組廃止を語っているのでなく、周波数帯売却の例としてEテレをあげたのではないだろうか。武田総務大臣がNHKの受信料値下げを口にしているが、具体策を示せていない。受信者の気持ちと公共性への「想像力」を働かせ、料金問題を多数が納得できる案としての「創造力」を働かせて実行してもらいたいものである。

爺の雑言4「NHKは必要か?」で書いたように公共放送としての番組を作成し流すNHKに料金は別として受信料徴収でいいとは思っている。公共性に特化し、再放送は無くして放送すれば、地上波1チャンネルそしてBSも1チャンネルだけでいいと思う。再放送はすべてネットのNHKプラスで見ることができるようにすればいいのだ。娯楽番組制作で、良質なコンテンツをつくるという名目で、民放では考えられないほど湯水のように金を使うのは止めることだ。そうすれば、受信料は500円で賄えるはずだ。受信料を支払う国民が株式会社でいうNHKの株主と同じなのだ。賄えないと言うのであれば、出来の悪い経営陣の退陣を求め変えるしかない。暴論になるが、コロナ禍の中、今の受信料を500円とし、現受信料との差額は「コロナ対策復興資金」として国家に回すくらいのアイディアがNHKや総務省から出てこないのだろうか。受信料値下げができない理由は聞きたくない、できる為に何をすればいいかを示す時だ。

コロナ対策に必要な想像力と創造力

コロナ禍におけるリーダーの発信力が問題視されているが、「ステイホーム対GoTo」の様に感染防止対策と経済対策の両輪を回す舵取りは誰がやっても困難なことに違いない。これだけの間、自粛という形で我慢を重ねた国民に何をメッセージするかはリーダーの資質として他国と比較され、各知事とも比較される。しかしである、小池都知事の様に、毎回違った「標語」メッセージを発していては「笛吹けども踊らず」になってしまう。一方、「男は黙って・・・」タイプの昭和のお爺さん菅総理には、暮らし方、働き方、生き方の意識を変える行動と新生活スタイルに関した何か強烈なメッセージをそろそろ発信して欲しいと思わずにはいられない。

コロナ対策と経済の「安全と安心」の両立には「想像力」が必要だ。経済対策としてのGoToには「安心と安全」への「創造力」も欠けていた。創造力があれば、前回(爺の雑言5)にも述べたが、少なくともコロナ予防対策としてアプリのCOCOAとPCR検査を義務付けした程度の旅行案はできたはずである。爺はCOCOAのアプリを入れ、行く前2週間は人との接触も家族だけにしてGoToトラベルを利用した。航空会社、ホテル、飲食店、土産物店のコロナ対策はしっかりとしていた。彼らは生き残りのために必死の努力をしていたのだ。「GoToトラベル=悪」とする考えには反対だ。ただただ政府の設計に「想像力と創造力」が欠けていたのだ。

菅総理はメッセージとしてまだ多くを発していないから、逆に発されるメッセージは強いものとなる可能性は高いはずだ。だが、1月7日の「緊急事態宣言」の会見でも明確なメッセージとは言い難いものだった。「安心と希望」がもてないメッセージは弱い。目的、戦略、戦術が示されないままの手段であってはいけないのだ。日本人の良心に頼っただけの対策では弱い。データが示すように、20代30代の無症状者がコロナを広めているのであれば、コアターゲットは外に出ている若者なのだから、繁華街の街頭ビジョンなどを使って若者への明確なメッセージをするべきだったと思う。「群れるな、大声で話すな、昼間から外で酒を飲むな」の様な標語と共に対策メッセージを出してほしかった。戦略や戦術でなく「飲食店夜8時まで」のような手段では国民を納得させられない。ドイツのメルケル首相は1回の発信で国民を納得させた。手を上げて国家危機のコロナ対策と経済活動維持を逃げずに引き継いだ菅総理にはできるはずだと信じたい。ペラ男のように多弁である必要はない。口下手でも魂の入った言葉が欲しい。

よりクリエイティブ力が試される広告

コロナ禍によりテレビを中心に広告費の削減がなされ、削減された広告費が戻る要因はほとんどない。広告においてはよりクリエイティブ力が試される時になったといえる。「投下量 ×クリエイティブ力 = 広告のパワー」だと言われる。だが、投下量が多くても、クリエイティブに力がなければ広告のパワーは落ちてしまう。クリエイティブが平均点の1以上でなければ、投下量が多くても広告パワーは落ち、投下量がすくなくてもクリエイティブ力が1以上あれば投下量も生きてくる。

話は少し逸れるが、爺がギャラクシー賞のCM部門の委員長をしている時、応募対象がテレビCMだけだったのを、ラジオCMも応募対象に加え同じ土俵で選考する案件を理事会に提案した時のことを思い出す。「テレビCMとラジオCMを同じ土俵で評価するのはどうかと思う」との反対意見が出たのだ。あまたある広告賞においては媒体別に賞が決められている点から真っ当な意見のひとつではあった。しかし広告というものは一旦市場に出た瞬間、媒体力の強弱とは関係なく他の広告とクリエイティブ力で競うことになるのだ。良い広告は、媒体力に関係なく(実際は媒体特性を活かして作成されるので無関係とはいえないが)評価されるし、実際評価されてきた。ギャラクシー賞CM部門は放送におけるクリエイティブの評価による広告賞であるから、ラジオCMもテレビCMと競うことが可能であるとして理事会での合意を取った。そしてその年、大賞こそテレビCMが受賞したが、優秀賞を受賞するラジオCMが出たし、今もラジオCMが優秀賞や入賞を取っている。

広告賞でのクリエイティブ力と広告主が求めるクリエイティブ力は違う場合が多い。広告賞のクリエイティブ力評価は、例えばギャラクシー賞では「情報性」、「創造性」、「社会性」「エンターテイメント性」の4つのポイントで審査を行い、「創造性にあふれ、メッセージがわかりやすく伝わり、視聴者の琴線にふれる、そして放送文化を担うにふさわしい社会性に優れたCM」を選んでいる。一方、広告主の求めるクリエイティブ力は広告賞が求める斬新性やスケール感などといったものでなく、広告目標に沿ったものでなければならない。それは広告目標を達成するためになされるブリーフィング(オリエン)に基づくものでなければならない。

想像力の集結コア・ブランド・アイディア

宣伝の仕事をするようになった時、コピーストラテジーというのがクリエイティブのバイブルだと教え込まれた。コピーストラテジーのコピーから言語表現と理解している人が広告界にも多いようだが、コピーストラテジーは言語だけにとどまらず、映像も含むメッセージ表現全体、広告全体を意味するものである。コピーストラテジーは顧客の好意・購買を勝ち取るためにブランドについて顧客に何を伝えるかの決め事である。この目的は主要な競合ブランドよりも自社が優れている点を伝え、選択する使用者を説得することにある。カバーされる要件は、全体目標、ターゲット、ブランドベネフィット、サポート(裏付け)、トーンアンドマナー、実施におけるガイドラインなどである。広告会社にブリーフィング(オリエンとも言う)する時にコピーストラテジーは広告主が用意するもので、出来上がった広告を判断するバイブルでもあった。

最近、コア・アイディアというものが日本の広告界に広がってきている。ネスレではOBI(オーナブル・ブランド・アイディア)と言い、コカコーラではCCI(コア・コミュニケーション・アイディア)と言って10年以上前から使われている。ブランドのコミュニケーションあるいはマーケティング活動において核となる要件であり、コピーストラテジーの上位に位置するものでもある。広告主、広告代理店を中心にブランドに関係するチームメンバーが合意し徹底するビジネスの中心に位置する考え方でもある。その点でCBI(コア・ブランド・アイディア)と呼ぶのがいいのかもしれない。コミュニケーションにおいてはビッグアイディアを導きだし、メディアミックスに道筋をつけるものともなる。

多くの企業はコア・アイディアの言葉を知っているかもしれないが、それをどの様に作成し、まとめていくかを知らない。広告代理店でさえプロセスを飛ばしてメディアミックスからビッグアイディア(「創造」)にチャレンジしている。

CBI(コア・ブランド・アイディア)は広告主、広告代理店などのブランド関係者が参加し決定していくプロセスが重要になる。各要素を作成、確認、合意して次に進む。そこには参加者の「想像力」が試される。そしてまとめ上げたCBIは関係者全員に徹底され、ビジネス、マーケティング、コミュニケーションのKPIとして評価されることになる。時間もかかるのでスキップしてCBIの合意なしに表現に進む誘惑に駆られる広告主も多いし、その導き方法さえ知らない広告主も多い。CBI(コア・ブランド・アイディア)の導き方手法のセミナーやコンサルティングにおいて、truestar hd(株)は知見を持っているので、相談があれば問い合わせされるといい。

素晴らしい広告を作るのは広告主の役割であり使命である。広告主が一番中心にいてリーダーシップを発揮しなければならない。だが、何でもわかる人材なんてそんなにいないのだから、各々の専門性を活かしていかにコラボレーションしていくかがキーとなる。それぞれの想像力を働かせたCBIから、ビッグアイディアは創造される。

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