総務省の影響力、功と罪どちら?

総務省の影響力、功と罪どちら? - Truestar Consulting Group

総務省の影響力、功と罪どちら?

爺の雑言7 総務省の影響力、功と罪どちら?

菅総理の長男が絡んだ総務省放送行政担当幹部と東北新社(放送事業者)との会食問題、武田総務大臣は会食した12人の処分を発表、自身も給与返上を示し、3月1日に当時総務審議官だった山田真貴子内閣広報官の辞職で幕引きをはかっている。

この問題、文春がどこから録音テープを得たのか、誰が録音したのか、どのメディアも取り上げていない。この件をばらすことで誰が得をしていくのか。たぶん処分を受けた側ではなく、その対極にある側ではないだろうかと思うのが一般的なのだろう。録音の中で批判されていた放送、ネット改革の急先鋒小林史明議員が得するようにも見えない。しかしこの会食騒動の間にNHK改革らしきものが密かに進行し閣議決定されていることを見逃すことはできない。

携帯料金値下げは成果か?

菅総理の鶴の一声で携帯料金値下げの動きが出てきた。爺は前にも記したが、政治が民間会社の経営に関わる料金問題に、公取に関わること以外で口を挟むのには反対である。「複雑な料金体系をわかり易くせよ」との行政指導であるならばよいのだが。

結果として、武田総務大臣がご自身の理解不足からKDDIの通話定額オプションに当初ケチをつける誤解発言の一幕もあったが、大手通信キャリア3社はサブブランドで足並みを揃えた料金プランを提示した。2020年春からキャリアサービスを開始した後発で準キャリアの楽天モバイルが発表した4月1日からの料金プランは1GBまで無料、3GBまで980円、20GBまで1,980円、20GB以上は2,980円で、より単純で利用者にわかり易いものであった。そして3月1日にNTTドコモがアハモの新料金プランを発表し、さらなる価格競争が続きそうである。

人口よりも多い携帯電話の契約数、費用負担が減るのであれば、家庭も企業も誰もが歓迎する話なのだろうが、お上から言われてすぐに変わる、安くなる料金を提示するこの流れには「今までが何だったの」との不信感も募ってくる。過去にさかのぼると、総務省は、携帯会社の販売奨励金を制限し、その原資で料金値下げに結び付けたいと考えていたが、なかなか大幅値下げに結びつかず、2006年のMNP導入で格安乗り換えを期待したがこれもうまくいかなかった。そして今回の「国民の共有財産である電波資源を使いながら、20%前後の利益率を得ているのはけしからん」との鶴の一声になった。

成功している企業において利益率20%はごく当たり前の数字である。米国の携帯会社も利益率は20%前後を確保している。利益率が高いということは、その分、税金もたくさん納めていることになる。国家にとって「税金を多く納める企業は良い会社」なのだ。これを言うと、 「電波という国民の共有財産で儲けるとはなにごとだ」との声が返ってくるが、テレビ局より売り上げの多い通信会社はテレビ局より多額の「電波利用料」を支払っている。菅総理は「携帯料金の値下げをしないと電波料金を値上げする」と言っていたが、電波料金が値上になれば、ユーザーの利用料金に跳ね返ることは誰にもわかることだと思うのだが。行政が民間ビジネスに過度に介入せず、フェアな競争の中で適正なサービスの提供ができる環境作りに政府は力を入れて欲しいものである。

 ネット広告規制は道半ば

爺の雑言の第2回目に2020年6月16日、政府のデジタル市場競争会議(当時議長・菅義偉官房長官)に期待すると記したが、2月17日公取委はネット広告市場に関する実態調査の最終報告を公表した。ネット広告価格の不透明な例、巨大IT企業の裁量で広告仲介業者の取引打ち切りの恐れがある契約例などを指摘し、独禁法違反に当たる例があれば厳しく対処するとした。優越的地位の乱用に触れる恐れとして、「取引先との契約を一方的に変更、理由なく契約解除」と「情報の利用目的の説明が曖昧、利用を拒んだ後も広告に利用」を指摘し、配信料の算定基準根拠の不明確なものとして「ニュースの配信料の算定基準をメディアに明らかにしない」点を上げ、それらはネット広告をめぐる問題行為であるとの見解を示した。

2月に施行した「デジタルプラットフォーム取引透明化法」では、巨大IT企業のオンラインモールやアプリストアを対象に、取引先との契約条件の開示や苦情への取り組みの年度ごとの報告を義務づけた。さらにネット広告の契約条件や広告価格の開示などを追加する方向で検討されるようだ。

2月25日オーストラリアは「ネット上でニュースを使う際に対価の支払い」を義務づける法案を可決した。このような動きは英国やカナダなども計画している。GoogleやFacebookが無料でサイト上に掲載する「ニュースの見出し」への対価を求めるものである。「ニュースの見出し」は検索やソーシャルメディアのサイトに間接的に大きな価値をもたらし、見出し自体がGoogleやFacebookのユーザー満足に貢献しているからだ。マイクロソフトはすでに、「検索やソーシャルメディアのサイトに大きな間接的な価値をもたらしている」と認め、この動きを支持する姿勢のようだ。日本政府も検討から実施に早急な対応が求められる。いつまでも日本の広告費をかすめ取られない方策とGAFAの日本での売上への課税策を政府に求めたい。

これで済ませていいのかNHK改革

NHKの2021-2023年度経営計画が1月13日経営委員会で了承された。武田総務大臣が「コロナ下での家計負担を軽くすべきだ」と息巻いていたNHK料金値下げ問題は2023年度にわずかに受信料を引き下げる残念な結果に終わった。総務大臣も舐められたものだ。もっと言えばNHKのスクランブル化を求めている8割の国民も舐められたことになる。この案は先に自民党総務委員会の国会議員が承諾しているのだから菅総理の考えに近かったのだろうし、武田総務大臣が舐められた様に見せる出来レースの感もある。結果、総務省NHK擁護派の勝ちとなってしまった。それを証明することが2月26日に政府が提出した放送法改正案にある。テレビを設置しているのにNHKと契約せずに受信料を払わない相手に、契約に応じない期間分の「割増金を課せる制度の導入」とNHKが業務効率化につながるとして要望した「中間持ち株会社」の新設を認めたことである。

2日の朝日新聞が社説で取り上げている「NHKはBSチャンネルの削減を予定しており、空く帯域の利用方法は衛星放送事業者の関心事の一つだ。衛星運用会社の中にはNHKが約50%を出資している企業もあり、NHKは料金の低減問題とも密接な関わりをもつ」と記している。

東北新社にはかつて「NHKニュース10」のメインキャスターを務め、その後NHKの理事にもなり、NHKエンタープライズの社長も2016年まで務めていた今井環氏が「顧問」になっているとの噂もある。この今井氏、愛媛県出身で、卒業した愛光高校の6年後輩に、接待問題にも登場する総務省の谷脇康彦総務審議官がいるのは偶然だろうか。NHKは経営計画の中で、コスト削減として2023年度に4Kを含むBS波を、3波から2波に減らすことを発表している。東北新社が、そのNHKが手放したBS波の取得を狙っているとしたら、東北新社の接待疑惑とNHK問題が結びつく。

NHK問題、爺の雑言で何度も取り上げたので今回は多くを語らないが、NHK改革は「何を公共とするか、その対価は妥当か」を示すことからはじまると思うのだが、経費削減計画によるわずかな料金値下げでお茶を濁そうとしている。公共放送であるなら「報道と文化の継承」が中心で、娯楽などの商業放送で賄えるものは除外してスリム化する必要がある。加えて、NHKの天下り機関NHKエンタープライズなどの整理を行い、その結果として納得のいく料金は示されるべきである。

テレビ局はネット配信に急ぎ舵取りせよ

神奈川県に住む爺は、先日の地震の影響で数時間の停電を経験した。停電になるとテレビという箱は何も映らない。テレビ局は放送しているのだが、テレビ(箱)は情報を得る手段として機能せず携帯電話を通して情報を得ることになった。

電通が発表した日本の広告費、テレビからネットへのシフトは止まらない。テレビ局は見逃し配信だけでなくネット同時配信に大きく舵をきるべきだ。と同時に若者向けコンテンツを増やし若者の視聴を獲得する時に来ている。番組表にしたがって流れるテレビ放送はオンディマンドでいつでもどこでものネットに比較して明らかに視聴者ニーズに沿っていない。完全な同時配信ではないがradikoの例は大いに参考になる。ほぼ同時配信、タイムフリー、各局共同という形態でラジオ聴取の低落を止めた。テレビという箱は最早、放送専用ではなくネット配信用の箱でもある。遅れれば遅れるほどネット配信で広告費を稼ぐ陣地は狭まり、得る果実も少なくなる。テレビ局は放送業から情報・娯楽サービス業へと急ぎ転換する必要がある。

テレビ放送の悪い例で最近目立つのが、SNSで話題のコンテンツを中心に番組構成した例が目立っている。これこそがテレビ放送の敗北を示すものでもある。放送であれ、ネットであれコンテンツがビジネスの中心になければ視聴競争には勝てない。何故、NetflixやAMAZONプライムがオリジナルコンテンツに力を入れているのかを考えるとわかる話である。彼らは資本力も大きい。テレビ局がバラバラで戦うよりネット上ではradikoのように連合して戦うべきではないだろうか。「戦線(流す先)は短く(少なく)兵糧(コンテンツ)を集中」の兵站で戦いに勝てる。かつての日本軍の兵站「戦線を長くして、兵糧届かず」の轍をふまないことだ。いずれNetflixやAMAZONプライムもYouTube同様無料と有料のフリーミアムを取り入れてくるだろう。そうなると広告費もいずれ彼らにむしり取られてしまうことになる。

爺はテレビ広告が好きだ。ネットで見る5秒後スキップできるCMはテレビCMより伝達内容で劣ると思っている。だが、放送からネットへの流れは止まらない。放送CMで稼ぐ額よりネットで稼ぐ額は少ない。地方局の問題もあり総務省からの指導も厳しい。だから動きが鈍くなる。だが、黒船はすでに上陸し陣地拡大している。放送CMで稼げている今の内にネット配信中心のビジネスモデルに急ぎトランスフォームする戦略が望まれる。

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