消費者パワーと顧客中心マーケティング

10年前のマーケティングでは、商品をどのように消費者の生活にハマるかを考え、商品の大々的な広告や宣伝キャンペーンを行うことで消費を促すという戦略が主流でした。有名人を起用したテレビCMや看板広告などを使い、人々を商品に引き寄せていく、「商品中心のマーケティング」です。しかし、今日では「顧客中心のマーケティング」が求められています。その変化の背景にある、消費者パワーの台頭と顧客を中心にする意味についてお話しします。

強まる消費者パワー

社会が発展する中、人々の消費動向も変化しています。その特徴に、消費者パワーの増大がみられます。消費者パワーとは、消費者が企業やブランドに与える影響力のことです。消費者の影響力が拡大しているのには、消費者のニーズの複雑化とSNSの普及による共有能力という2つの背景があります。

①ニーズの複雑化

具体的に、ニーズはどのように複雑化しているのでしょうか。

現代の消費者は、購入する商品に対してこだわりがますます強くなっています。数えきれないほどの商品が市場に出回るいま、消費者は個人個人のスタイルや購入のタイミングなど様々な条件とマッチする商品やサービスを求めています。当然一人一人のニーズは、十人十色です。このようなニーズの多様化・複雑化によって、どのように多くの消費者に対して、個人のニーズに合った商品を提供するかを考えることが必要になります。

②SNS上の口コミの影響力

現代の社会では、インターネットやSNS上で商品やサービスに対する評価を、簡単に大勢の人々と共有することができます。またInstagramやSnapchatのストーリーなどに写真や動画を投稿することで、口コミなどの文章化された評価ではなく、体験そのものを他の人と共有することが日常的に行われています。

このように、現代の消費者は、他の消費者の購買行動に対して強い影響力を持っていると言えます。例えば、ある商品を購入した5人の中で、4人が商品の購入に満足していたとします。しかし、満足しなかった1人が商品について悪いレビューをSNS上でシェアすれば、その評価はたちまち様々な人々の目に入り、潜在的な顧客の購買行動を抑制することにつながります。SNSによって、消費者一人一人の影響力が強まったのです。

顧客中心のマーケティングをするためには

消費者パワーの増大の結果として、商品中心のマーケティングから顧客中心のマーケティングへの移行があります。顧客一人一人のニーズを理解し、それにマッチした商品を提供することがマーケティングの大きな課題になります。その課題を達成するためには、具体的にどのような施策を行えばいいのでしょうか。以下の3つのポイントを軸として、アクションプランを立てることがカギとなります。

①顧客価値を理解する

顧客価値とは、商品そのものの価値に加えて、顧客に対して行うサービスの価値です。これは、商品を購入するという体験の価値から顧客がその価値を受け取るために費やした時間・労力などのコストを引いたものに相当します。そのため、顧客価値を向上させるためには、この顧客が負担するコストを下げることが必要不可欠です。

②顧客を中心に提供する体験を構築する

顧客が支払う時間・労力を減らすためには、人々が商品を購入するプロセスを分析する中で、顧客にとっての手間を省いていきます。カスタマージャーニーマップを作成し、顧客の個人レベルでの購買行動を細かく探ります。その中で大切なことは、一連の購買プロセスを顧客の目線で考えることです。

カスタマージャーニーマップの活用方法についてはこちらの記事をご覧ください。(顧客プロファイリングの基本

③顧客の信頼を得る

最近の複雑化した消費者のニーズの1つに、人道的でエシカルなブランドを選びたいという考えがあります。人権問題や環境問題などの社会が抱える課題解決に対して、ブランドがどのように影響を及ぼしているかに、消費者の関心が集まっています。企業の社会貢献活動、またサステイナビリティへの取り組みなどは、顧客が信頼を寄せる大きな要因です。

また、人々から信頼を得るブランドは、顧客に親近感と共感を持たせるコミュニケーションに力を入れています。インフルエンサーやUGCなどを通して、ブランドと顧客の間につながりと築くツールを上手く活用することで、顧客を第一として考える正真正銘のブランドであることを発信します。顧客中心という姿勢が、顧客の強い信頼につながります。

参照:

EYJapan「ソーシャルメディアにおける新しい消費者パワーの台頭」(https://www.eyjapan.jp/services/advisory/global-contents/2013-01-25-02.html

ITmediaエンタープライズ「顧客価値ってなんだっけ? 難しい理論は表にする」(https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1207/26/news013.html